「『これで安心だ』と思ったのも束の間でした」。70代後半の両親が使う車にドライブレコーダー(ドラレコ)を取り付けていた40代の男性は、そう言って頭を抱えた。両親は孫の顔を見るため、長野から都内へ月に一度のドライブ中だったという。
「万が一のことを考えて、昨年夏にドラレコを購入しました。この事故は運転していた父親のミスではなく、一般道で後ろから追突されたんです」
連絡を受けた男性を待っていたのは驚きの事態だった。「そっちが急にブレーキをかけたせいで、ぶつかった」という相手方の主張を覆そうと、両親の車のドラレコを確認すると「映っていたのは、事故の後の映像だけ」(前出・40代男性)だったというのである。いったい、何が起きたのか。
ドラレコの〈肝心な場面の上書きトラブル〉の多くは「SDカードに対する認識不足」と指摘するのは、日本交通事故鑑識研究所・代表取締役の大慈彌拓也氏だ。SDカードとは、ドラレコの中に入れる記録媒体である。
「多くの場合、はじめから付属しているカードの容量は、8GB程度です。設定によっては1時間程度しか録画できず、それが過ぎると、頭から上書きされてしまう。ですから、付属のものより容量の大きいカードを別途購入することをお勧めします」(大慈彌氏)
冒頭のケースでは、8GBのSDカードが使われていたことに加え、エンジンを止めても録画を続けるバッテリー内蔵型のドラレコだったため、男性が現場に着くまでの約1時間でカードの容量がいっぱいになり、事故発生時の映像が上書きされてしまったのだった。
SDカードをめぐる問題は、これだけに止まらない。毎週のように夫婦でキャンプへ出かけている30代男性は大容量のカードを使っていたが、山で衝突事故を起こしたとき、肝心のドラレコには何も記録されていなかったという。