時代の流れで街の銭湯の数は減りつつある。が、魅力的な設備を整え、高齢者を見守る地域の拠点として新たな役割も担い始めた。
東京都市大学人間科学部教授で医学博士・温泉療法専門医の早坂信哉さんもすすめる銭湯の今を、全国浴場組合理事長で、東京都大田区の老舗銭湯「はすぬま温泉」の3代目店主・近藤和幸さんに聞いた。
「銭湯のよさはなんといっても大きな湯船。浴場には蒸気たっぷり。マイナスイオンが満ちていて、リラックスできます」と、近藤さん。
サウナやジェットバス、薬湯など、起死回生をかけ、全国の銭湯が最新設備や特徴ある湯を競い合っているという。脱衣所はしっかり暖かく、ヒートショック対策も万全だ。
「何より人の目があるから、のぼせてもよろけても大丈夫。家庭の風呂より安心です」(早坂さん・以下同)
男女脱衣所の真ん中におじさんが座る、昔ながらの番台があるのは全国でも2割ほど。今はフロント形式が主流だ。
「かぐや姫の『神田川』が流行った頃は、カップルが寒い外で待ち合わせたけれど、今は暖かいフロント前のラウンジで。高齢のご夫婦なども風呂上がりにアイスクリームを食べながら、テレビを見てゆっくり過ごしています(笑い)」
銭湯は近所の顔見知りと自然に会えるのもいい。いつも見る顔が“今日は来てないね”と気にし合う。こんな特性を生かし、自治体と連携して独居や認知症の高齢者を見守る試みも始まっている。
「気軽に来ていただけるよう高齢者の定期的な無料・割引日を多くの自治体で実施しています。また東京都内のいくつかの区市町村では、銭湯経営者が認知症サポーター養成講座を受講し、浴場で困っている認知症の人やその家族を支援できるようにしています。
銭湯はもともと地域の社交場でした。お湯に入って知り合いでもそうでなくても、おしゃべりをする。こういうことも自然な介護予防になると思う。最近はSNSなどを見て若い人も来てくれます。ストレスを抱えた彼らと人生の先輩の高齢者と、いい交流が生まれています」
こんな日本的文化に興味を持つ外国人客も。オリンピックの夏に向けてますます利用者が増えそうだ。健康と新たな出会いを求め、近所の銭湯へぜひ!
※女性セブン2020年2月13日号