ライフ

40億円の借金を完済! 「過敏で繊細」でも逆境を生き抜ける理由

湯澤剛氏は倒産寸前だった会社を16年かけて再生させた

 他人の言動で動揺しやすく、あらゆる刺激に過敏、ちょっとしたことでも傷つき、そのことをなかなか忘れられない……。そんな気質を持つ「HSP(ハイリ-・センシティブ・パーソン)」と呼ばれる人たちの存在が注目されている。自他共に認めるHSPで、ある日突然巨大な借金を背負わされることになったあるサラリーマンの体験を綴った著書『小心者のままでいい 「臆病」「過敏」を強みに変える25の方法』(小学館)が話題だ。著者・湯澤剛さんに、その想像を絶する体験を聞いた。

 * * *
 私には子どものころから「小心者」であるという自覚がありました。あらゆることが気になり、臆病で、ネガティブな感情を引きずりやすい性格です。争いごとがとにかく苦手で、たとえば買い物をしてもらった釣り銭が少々足りなくても、大体は何も言わずに店を出ます。こちらから何かを言って相手から強い反応を受けるのがイヤなのです。

 学生時代は自分でそれを「弱さ」と捉えていましたので、何とか強くなれるように、アメリカに留学したり、空手を習ったりと多くのことに挑戦しました。

 しかし、その反面負けず嫌いのところがありますから、サラリーマン時代は業務に邁進し、それなりに成功していました。ところがある日、居酒屋チェーンを創業・経営していた父が急逝、長男である私が突然会社を継がざるを得ない状況になりました。それまでまったく知らなかったのですが、会社の決算書を見て言葉を失いました。

 そこにあった負債額は、40億円でした。        

 借り入れていたメガバンクの担当者は「どうやって返してくれますか」と連日のように迫ってきます。返せ、と言われても、私は単なるサラリーマンでずぶの素人、居酒屋ビジネスも経営も何もわかりません。そのころ店舗を回ってみると、板前たちは店もあけずに遊んでいたり、ホールスタッフもお客さまをほったらかしだったり、ひどい状況でした。

 私ひとりでこれをどうしろと言うのか。会社自体が立ちゆかない状況なのに、何も知らない私に、どうやって40億円を返せというのか……。

 そこから地獄のような日々が始まりました。あらゆる請求書が段ボールに山積みになっていく毎日。支払いを迫る電話が終日かかってくるオフィス……。苦しむ私に追い打ちをかけるように、店舗火災、食中毒事件などが起き、私自身の心身にも変調をきたすようになったころ、ある「事件」が起きました。

 それをきっかけに、「これがどん底だ、これ以上落ちることはない」とふんぎりがつきました。そして、HSPの気質は生まれつきのもので仕方がない、また、その特性をプラスに転換することは可能、と知ってから、私の人生の巻き返しが始まりました。

 徹底的に自分の思考をウォッチすること。それを頭の中からいったん出して見える化すること。最悪の場合を想定して起き得ることを書き出してみる。「行動チェックリスト」を作る……などなど、実際に試して効果があった思考法・ツールをまとめ、毎日必ず実践しました。

 次第に、動揺を完全になくすことは不可能でも自分でコントロールすることができるようになり、家族や社員との関係も格段に改善されました。それと比例して業績も回復し、16年間で40億円を完済することができたのです。

「小心者だからできたことが多くありました」(湯澤剛氏)

 今ではあの逆境に感謝していますし、あれがなければ自分を変えることはできなかっただろうと思っています。また、「小心者」だからこそできたことが多くありました。HSPの特性は間違いなく強みに転換できるのです。

 完済までの逆転劇と、その体験の中で編み出した25のツール・思考法を、新刊『小心者のままでいい』で紹介しました。そのままでいい、あなたの特性は必ず力をくれる。そして、どんな逆境が訪れても、あきらめなければ必ず道は拓ける。そんなメッセージを、私と同じような特性を持ち「生きづらい」と感じていらっしゃる方々に届けられたら、と心から願っています。

◆撮影・浅野剛

【PROFILE】湯澤剛(ゆざわ・つよし)/株式会社ユサワフードシステム代表取締役。1962年、神奈川県鎌倉市生まれ。早稲田大学法学部卒業後キリンビール入社。国内ビール営業を経て、ニューヨーク駐在、医薬事業本部海外事業担当などに従事、1999年、父の急逝を受け、株式会社 湯佐和を引き継ぐ。40億円という莫大な負債を抱えて倒産寸前だった会社を16年間かけて再生。2018年に株式会社ユサワフードシステムを設立。経営業以外に、これまでの体験を元にした講演活動なども行っている。

関連記事

トピックス

1990年代にグラビアアイドルとしてデビューし、タレント・山田まりや(事務所提供)
《山田まりやが明かした夫との別居》「息子のために、パパとママがお互い前向きでいられるように…」模索し続ける「新しい家族の形」
NEWSポストセブン
新体操「フェアリージャパン」に何があったのか(時事通信フォト)
《代表選手によるボイコット騒動の真相》新体操「フェアリージャパン」強化本部長がパワハラ指導で厳重注意 男性トレーナーによるセクハラ疑惑も
週刊ポスト
太田房江・自民党参院副幹事長に“選挙買収”工作疑惑(時事通信フォト)
【激震スクープ】太田房江・自民党参院副幹事長に“選挙買収”工作疑惑 大阪府下の元市議会議長が証言「“500万円を渡す”と言われ、後に20万円受け取った」
週刊ポスト
2024年5月韓国人ブローカー2人による組織的な売春斡旋の実態が明らかに
韓国ブローカーが日本女性を売買春サイト『列島の少女たち』で大規模斡旋「“清純”“従順”で人気が高い」「半年で80人以上、有名セクシー女優も」《韓国紙が哀れみ》
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
【国立大に通う“リケジョ”も逮捕】「薬物入りクリームを塗られ…」小西木菜容疑者(21)が告訴した“驚愕の性パーティー” 〈レーサム創業者・田中剛容疑者、奥本美穂容疑者に続き3人目逮捕〉
NEWSポストセブン
国技館
「溜席の着物美人」が相撲ブームで変わりゆく観戦風景をどう見るか語った 「贔屓力士の応援ではなく、勝った力士への拍手を」「相撲観戦には着物姿が一番相応しい」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
【20歳の女子大生を15時間300万円で…】男1人に美女が複数…「レーサム」元会長の“薬漬けパーティ”の実態 ラグジュアリーホテルに呼び出され「裸になれ」 〈田中剛、奥本美穂両容疑者に続き3人目逮捕〉
NEWSポストセブン
前田亜季と2歳年上の姉・前田愛
《日曜劇場『キャスター』出演》不惑を迎える“元チャイドル”前田亜季が姉・前田愛と「会う度にケンカ」の不仲だった過去
NEWSポストセブン
timelesz加入後、爆発的な人気を誇る寺西拓人
「ミュージカルの王子様なのです」timelesz・寺西拓人の魅力とこれまでの歩み 山田美保子さんが“追い続けた12年”を振り返る
女性セブン
不倫報道の渦中にいる永野芽郁
《私が撮られてしまい…》永野芽郁がドラマ『キャスター』打ち上げで“自虐スピーチ”、自ら会場を和ませる一幕も【田中圭との不倫報道】
NEWSポストセブン
電撃引退を発表した西内まりや(時事通信)
電撃引退の西内まりや、直前の「地上波復帰CMオファー」も断っていた…「身内のトラブル」で身を引いた「強烈な覚悟」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 自民激震!太田房江・参院副幹事長の重大疑惑ほか
「週刊ポスト」本日発売! 自民激震!太田房江・参院副幹事長の重大疑惑ほか
NEWSポストセブン