佐賀県の南部、長崎県との県境に位置する嬉野市の嬉野温泉。「日本三大美肌の湯」の一つとして名高い温泉地が今、大きな注目を集めている。インターネット旅行予約サービス「楽天トラベル」の調査「シニアに人気の温泉地ランキング」で、2016年から4年連続で1位を獲得したのである。
理由は約30軒ある温泉地の旅館全体で取り組んでいるバリアフリー化にある。主導しているのは2007年設立の任意団体「佐賀嬉野バリアフリーツアーセンター」(以下BFTC)だ。
ロビーや入口にスロープを完備、多数の手すりがついた部屋、車椅子でそのまま入っていける部屋付露天風呂を作るなど、既存の旅館を改装。旅行客の状態・要望を聞いて旅館とのマッチングも担当する。また車椅子や介助用具の貸し出し、1人での入浴が困難な旅行客のための「入浴介助サービス」(有料)、街の商店など各施設のバリアフリー設備の情報提供なども行なっている。BFTC会長で、旅館経営者の小原健史氏が語る。
「現在BFTCは全国に広がっていますが、私たちはその先駆けとなった伊勢志摩BFTC(2003年設立)から色々学ばせてもらいました。伊勢志摩が提唱する『100人の障がい者が居れば、バリアの種類も100通りある』というパーソナルバリアフリー基準に賛同。同じ車椅子でも、自分1人で乗れない人もいれば、車椅子ラグビーをできる人もいるように、基準は人それぞれ。街全体で様々なパターンに柔軟に対応できるようになろう、ということです」(以下同)
だが、ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。