ある日突然、ネット上に自分の個人情報が公開され、犯罪者として拡散される──。そんな事件が増えている。
お笑い芸人のスマイリーキクチさん(以下、キクチさん)は、1999年からの10年間、「凶悪殺人事件の共犯者」だという誹謗中傷に悩まされた。
「ある日、事務所の人から、ぼくの公式サイトの掲示板を見せられ、目を疑いました。そこには、ぼくが10年前に世間を騒がせ、すでに判決も出ている凶悪事件の共犯者だという投稿がされていたんです。その根拠は、犯人たちと同じ足立区出身だったことや、彼らと同世代だということだけでした」(キクチさん・以下同)
事務所は公式サイトで投稿内容を否定したが、誹謗中傷はひどくなり、出演番組などにも抗議が殺到。さらには、「彼女がいたら乱暴してやる」など、本人以外も脅迫されるようになった。
「ぼくのことより彼女や家族に何かあったらという恐怖が大きく、警察へ相談しました」
これまでも警察の生活安全課には相談に行っていたが、相手にされなかった。しかしこの時に、ネットでの誹謗中傷や脅迫は刑事課の担当だと知り、刑事課に相談。捜査をしてもらえることに。その結果、誹謗中傷コメントを書いた3000人以上の中から悪質な書き込みをした19人を特定。名誉毀損や脅迫罪で18人を摘発、1人が逮捕された。ネット上で誹謗中傷をした複数の加害者が一斉摘発されたのは、日本では初めてのことだった。
◆誹謗中傷犯は正義感あふれる普通の人