ビジネス

記録的暖冬で「スキー離れ」加速 雪遊びに原点回帰の動きも

近年は外国人観光客が多い日本のスキー場(写真提供/奥伊吹観光株式会社)

近年は外国人観光客が多い日本のスキー場(写真提供/奥伊吹観光株式会社)

 2月に入り、ようやく冬らしい寒さの日もあるが、今年は記録的な暖冬の影響で、日本各地のスキー場は臨時休業を余儀なくされるゲレンデが続出するなど、軒並み苦しい運営を迫られている。ただでさえ“スキー離れ”に歯止めがかからない中、今後のウィンタースポーツ人気はどうなってしまうのか。神戸国際大学経済学部教授で総務省地域創造力アドバイザーの中村智彦氏がレポートする。

 * * *
 今年は記録的な雪不足の影響で、各地のスキー場で滑走できなかったり、一部しか滑走できない状態だったりの場所も多くなっています。

「今年の雪不足は特別だとしても、今回をきっかけに廃業するスキー場も多く出るのではないか」

 山形県のある自治体職員はそう危惧します。近年の暖冬の恒常化で、開業期間を短くせざるを得ないといった原因もありますが、じつはもっと深刻なことが起こっているのです。

 公益財団法人日本生産性本部の「レジャー白書2018」によれば、日本のスキー人口が最多だったのは長野オリンピックが開催された1998年の1800万人でした。その後、急激に減少が進み、2017年には620万人と最盛期の3分の1にまで落ち込んでいます。

 1998年の冬季五輪オリンピックが開催された長野県でも、スキー場利用客は1992年の2119万人をピークに減少し、2018年から2019年の冬季には645万人とやはり3分の1に減少しています。

 こうしたことから、スキー場もピーク時には110か所あったものが、94か所に減少しています(長野県観光部山岳高原観光課「平成30-31年 スキー・スケート場の利用者統計調査結果について」)。こうした傾向は山形県などでも同様であり、かつてのような活況は見られなくなっています。

 2000年代にはスノーボードが若者に人気となり、スキー人口の減少に歯止めがかかるかに見えましたが、その後、スノーボードも伸び悩み、全体では減少傾向が続きました。ここ数年でこそ横ばい状態が続いていますが、全盛期から比較するとかなり寂しい状況になっています。

 中部地方の自治体職員は、「スキー場は冬季の雇用を創出しており、農閑期の現金収入の場としての役割が大きかったのが、スキー場が閉鎖されることによって地方の経済に大きな影響を与えている」と嘆いています。

 長野県出身の大学生の一人は、「父たちの時代は、大学の冬休みや春休みは長野の実家に帰り、スキー場でアルバイトというのが定番だったと聞きます。しかし、僕たちにとってそれは昔話です」と話しています。

関連キーワード

関連記事

トピックス

2025.1.5/ジュンク堂 三宮駅前店。阪神・淡路大震災を機に書店の使命に気づいたと語る工藤恭孝さん。震災後、ジュンク堂書店は地方出店を積極的に進めた
ジュンク堂書店創業者が語る「被災地に本屋は必要だった」 震災から1か月経たずに営業再開「リュックを背負ったたくさんの人たちが列を作っていた」【阪神・淡路大震災から30年】
週刊ポスト
阪神大震災で行方不明者を捜索する自衛隊員(時事通信)
【阪神・淡路大震災から30年】当時の雑誌が報じた「クラッシュ・シンドローム」のリアル「尿はコーラのように褐色」「懸命なリハビリ」
NEWSポストセブン
79年から続く茶販売店「味萬」を営む伊東正和さん(撮影:加藤慶)
【阪神・淡路大震災から30年】神戸市長田区で復興に尽力した商店街元理事長「今だからこそ伝えたいこと」
NEWSポストセブン
語り部を続ける米山正幸さん(撮影:加藤慶)
「経験がなくても記憶は伝えられる」娘とともに「語り部活動」を続ける北淡震災記念公園・総支配人の“ブレないポリシー”【阪神・淡路大震災から30年】
NEWSポストセブン
中居正広“深刻トラブル”被害者X子さんが心の内を明かした(時事通信フォト)
《スクープ証言》中居正広“深刻トラブル”被害者X子さんが口を開いた「9000万円ものお金はもらってません」、フジテレビに対しては「諦めの気持ちが強い」
週刊ポスト
3場所ぶりの出場に踏み切った横綱・照ノ富士だったが…(時事通信フォト)
現役引退の横綱・照ノ富士、進退の土俵際でこだわった「最後の大仕事」 次の横綱候補への思い
週刊ポスト
テレビ局に手のひら返しをされる中居正広
中居正広、謝罪文で変わった潮目 テレビ局は沈黙から一転“切り捨て”モード、“育ての親”女性社長も距離を置き、香取慎吾も“手のひら返し”
女性セブン
趣味を通じて出会った“美女”とデートをしていたSnow Man向井康二
Snow Man向井康二、YouTube登録16万人超え“ゴルフタレント”と名門コースでラウンドデート お相手は「大勢いるゴルフ仲間の1人」と交友認める
女性セブン
犯行後、田村瑠奈被告がホテルのフロントに“お願い”した電話の内容とは(右/ホテルの公式サイトより)
《頭部のない全裸の遺体が土下座のように折りたたまれ…》犯行後、田村瑠奈被告がホテルのフロントに“お願い”した電話の内容【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
年末の夜に地元の藤沢で仲間と忘年会をしていた中居正広
渦中の中居正広が地元藤沢で仲間と忘年会「浴びるように飲んで悪酔いしていた」 活動再開は“絶望視”、強気な声明文は引退への“工作”か
女性セブン
松竹芸能からの退社を発表した濱口優(時事通信フォト)
よゐこ濱口優、松竹退社の裏にパワハラか「スタッフの前で罵倒」「不機嫌になって無視」などでマネジャーが次々交代 「結婚後により態度が悪くなった」の指摘も
女性セブン
「週刊ポスト」本日発売! 中居正広「トラブル女性」告白スクープほか
「週刊ポスト」本日発売! 中居正広「トラブル女性」告白スクープほか
NEWSポストセブン