新型コロナウイルスの感染拡大は止む気配がない。その脅威は、やはり中国との交流が多い韓国にも広がっている。ソウル在住のジャーナリスト藤原修平氏が、ウイルス封じ込めに躍起となっている韓国の現状をレポートする。
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韓国映画『パラサイト』が、仏カンヌ映画祭に続いて米アカデミー賞も制した。この両者を制するのは1945年の米映画『失われた週末』以来なんと75年ぶりで、アジア映画では初めての快挙だ。韓国語の原題は『寄生虫』。半地下階に住む家族が豪邸に寄生するという物語で、韓国での観客動員数は歴代トップテンには入らないものの、1000万人以上を記録している大ヒット作だ。
この映画には、不謹慎ながら、思わず苦笑してしまう場面がある。通りに散布された大量の消毒剤が主人公一家の住む半地下階の家に吹き込んでくる場面がそれなのだが、これが、新型コロナウイルス騒ぎにある韓国の近未来を、偶然にも描き出しているように見えてしまうのだ。
2月11日現在での韓国の新型コロナ感染者数は、チャーター便で帰国した人を含め28人。横浜に停泊中のクルーズ船での感染者を除けば、日本の感染者数とほぼ変わらない。問題は、韓国の人口密度が日本の約1.5倍であり、その人口の約半分が首都圏に集中しているということだ。そのため日本よりも感染しやすい環境にあると言ってよく、対策の徹底は火急である。
新型コロナウイルスという姿の見えぬ敵に対して、韓国社会では官民挙げて厳戒態勢を敷いている。日本の文科省にあたる教育部は、今月に入ってから、全国の各学校に大規模な行事の自粛を勧告している。その代表的なものが、卒業式の中止だ。