芸能

カンテレと読テレの独自路線 医療過多の冬ドラで存在感放つ

カンテレが制作、異色作として注目の『10の秘密』(公式HPより)

 今、放送されている連続ドラマを制作しているのは在京キー局だけではない。大阪に本社を置く準キー局もオリジナリティあふれる作品で存在感を出している。その代表が、カンテレと読売テレビだ。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが、準キー局のこの2局が独自路線を貫く背景について解説する。

 * * *
 今冬のドラマは、ゴールデン(19~22時)、プライム(19~23時)帯に放送される16作のうち、医療を扱ったものが6作、刑事事件を扱ったものが6作放送されるなど、これまでにないほどジャンルの偏りが見られます。

 その中で他作とは一線を画し、独自の道をゆくのは、カンテレ制作の『10の秘密』(フジテレビ系)と、読売テレビ制作の『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』(日本テレビ系、以降『シロクロ』に略)の2作。前者はさまざまな秘密を連鎖させたオリジナルの長編ミステリーで、後者はアメコミや特撮を彷彿させる異色のヒーローモノです。

 どちらの作品も視聴率では苦戦傾向がうかがえるものの、ツイッターを中心としたネット上の動きは活発。『10の秘密』は秘密の考察、『シロクロ』は華麗なアクションシーンなどで、さまざまな反響を集めています。

 両作に共通しているのは、作り手の熱。視聴率の獲得を第一に考える在京キー局が踏み込めないジャンルの作品に挑み、しかもオリジナルで脚本・演出からロケ、音楽、プロモーションまで、「やれそうなことはやり切ろう」という全力投球の姿勢がうかがえるのです。

 テレビ番組の放送におけるネットワークの中心を担うフジテレビや日本テレビなどを“キー局”と呼びますが、カンテレと読売テレビはそれに続く立場の“準キー局”。なぜ“準キー局”のカンテレと読売テレビは、このようなアグレッシブな姿勢でドラマ制作できるのでしょうか。

◆視聴率が獲れなくても挑戦をやめない

 フジテレビ系の火曜21時枠ドラマを制作しているカンテレは、アクションにこだわり抜いた『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』、高校生の犯罪と逃亡を描いた『僕たちがやりました』、生徒の不審死をスクールカウンセラーが追う『明日の約束』、生活保護の実態に踏み込んだ『健康で文化的な最低限度の生活』、発達障害を想起させる主人公の日々を描いた『僕らは奇跡でできている』、高齢者の遺産を狙う悪女を主人公に据えた『後妻業』など、他のドラマ枠とは一線を画すエッジの効いた作品を手がけ続けています。

「なかなか視聴率には結びつかなくても、一話完結の定型的な医療・刑事ドラマに走らず、チャレンジをやめない」という姿勢は、まさに準キー局の矜持。今冬の『10の秘密』も挑戦すること自体が難しい長編ミステリーであり、しかも原作のないオリジナルで「結末が読めない」という連ドラ本来の醍醐味を視聴者に与えています。

 キー局のTBSが同じ長編ミステリーの『テセウスの船』を手がけていますが、こちらは漫画原作があるだけに、「いかに準キー局のカンテレが攻めているか」が分かるのではないでしょうか。

 一方、読売テレビは、長年木曜深夜にドラマを手がけ続けてきました。その中には、バカリズムさんが脚本を手がけた『黒い十人の女』、世間の不倫報道をモチーフにした『ブラックスキャンダル』、ネットでバズる一家の悲喜こもごもを描いた『向かいのバズる家族』など、深夜ドラマの中では際立つ意欲作が少なくありません。

 さらに今冬の『シロクロ』は、読売テレビにとって16年ぶりとなるプライム帯のドラマだけに気合十分。これまで深夜ドラマでじっと蓄えてきた力を一気に吐き出すように、清野菜名さんと横浜流星さんのダブル主演、社会の暗部にシロクロをつける痛快な物語、アクションと胸キュンシーン、グラミー賞主要4部門制覇したばかりのビリー・アイリッシュを主題歌起用するなど、圧巻のプロデュースを見せています。

◆系列局の意地が多様性につながる

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