父が急死したことで、認知症の母(85才)を支える立場となった『女性セブン』のN記者(55才・女性)が、介護の裏側を綴る。
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認知症のせいか、調子のいい時と悪い時の母は別人のよう。もの忘れはあっても昔と変わらず前向きで安心していると、翌日には無表情で不穏になっていたりする。予測不可能!と空を見上げて「もしや天気が?」と思い至った。
◆電話が鳴るたびに母の機嫌に一喜一憂する私
「もしもし、ママだけど」と、わりと元気な声で、母から電話がかかってきた。「あ、ママ、元気?」と、私は母の勢いに合わせるように軽快に返した。その途端、「えーと、うぅぅぅ…」。
母は低い声で唸った後、また後でかけると電話を切った。しまった! またやってしまった。最近の母は、電話をかけてつながった時にはもう、用事が頭から消え去る間際。だからいきなり「元気?」などと質問するのはNGだった。
母とは通院などで月3~4回会うが、普段は電話が主なコミュニケーション。母がかけてくる電話の声や話す内容は、頭と体の健康を推し量る貴重なバロメーターなのだ。
元気な時は声も高らかに「お風呂が沸くまでおしゃべりしようと思って」などとお愛想交じり。話の内容は毎回、判で押したように同じだが、5分くらい話すと「じゃあね」とあっさり母の方から切る。
不調の時は、母に言わせると頭に霧がかかったようにぼんやりするらしい。元気な時は自分のもの忘れも自覚しているが、それもなんだかわからなくなる。すると別人のように不穏になるのだ。
「もしもしNちゃん、私、胸騒ぎがするの。パパは自分が死ぬことを知ってたのよ」