新型コロナウイルスで慌ただしい首相官邸の記者クラブ「内閣記者会」加盟各社に2月17日夜、加盟社の一つである共同通信から「新型肺炎で御報告」と題した文書が送られた。その文書が、官邸中枢に波紋を広げている。文書にはこうあった。
〈東京都が昨日(16日)発表した新型コロナウイルス感染者の一人であるハイヤー運転手の60代男性は、1月末から2月初めにかけて4日間、共同通信の業務に従事していたことが分かりました〉
共同通信はこのハイヤーに乗車した記者ら10人を自宅待機とし、保健所に相談しているという。共同通信の関係者が語る。
「念のため10人全員、自宅待機となっているけれど、誰も症状は出ていません。ただ、そのなかに安倍総理番の若手女性記者が含まれていた。彼女は共同の何人かいる総理番の1人で、総理と面と向かって話すというよりは、総理の背中を追っかける感じですね。今のところとても元気で、感染しているような気配はないようです」
この知らせに記者クラブ一同は大慌てとなった。加盟社の官邸記者は語る。
「その日の午前中には共同通信の記者から一報を聞いていたのに、正式な通達は夜になってからだったので、ちょっと対応が遅いんじゃないかと記者会では不満の声が上がっています。総理番は、総理だけでなく秘書官も担当している。万が一にも秘書官に感染すれば総理にも感染させてしまう可能性があります。記者会では今、取材先である総理らに迷惑をかけてはいけないと、みんなマスクをつけはじめています」
その後、18日になって共同通信社から「新型肺炎で追加報告」と題した文書が出た。それによると、保健所から共同通信社に連絡があり、〈10人中、乗車から14日間経過していない3人について、乗車から14日間、健康観察とするよう指示〉があったという。それに従って共同通信社は3人に引き続き自宅待機を指示。なお、この3人には前出の総理番の女性記者は含まれていないといい、〈3人以外の職員は順次、業務に復帰させます〉とも記されていた。
コロナウイルスショックは、ついに国家中枢である首相官邸にまで及んだ。