国内

公立大学の人気上昇 「税金による安易な救済」には反対論も

公立大学の志願倍率はいまや国立大を上回る(時事通信フォト)

公立大学の志願倍率はいまや国立大を上回る(時事通信フォト)

 大学受験シーズンが終盤を迎えている。近年、少子化の影響もあり定員割れする私立大学が増える一方で、人気が上昇しているのが「公立大学」だ。平成30年間で公立大学の数は2倍以上に増え、志願倍率も国立大を上回るまでになった。だが、公立といえども生き残るためには幾多のハードルが立ちはだかっている。ジャーナリストの山田稔氏がレポートする。

 * * *
 国公立大学の志願状況が明らかになった(2月5日現在)。志願率は国立82大学394学部で3.8倍、公立は89大学198学部(独自日程の国際教養大と新潟県立大を除く)で5.6倍と公立大人気の高さがうかがえる。

 公立大には10倍を超える大学がかなりある。最も高いのは、山陽小野田市立山口東京理科大学工学部(中期日程)の34.2倍。募集人数が少ないこともあるが、20倍以上となった学部のある大学が23校もある。ちなみに、国立大で20倍以上の学校は2校しかない。

 公立大は地方自治体が設置、管理する大学で、地域社会との密着が強いのが最大の特徴。注目は、公立大学の数の増加だ。平成元年(1989)度に39大学6万人だったのが、令和元年(2019)度は93大学15万8000人(大学院大学2校を含む)へと、この30年間で2倍以上に増えている。

 背景には地方の危機感がある。地方活性化、若者流出防止のために地方自治体が中心となって相次いで新設や鞍替えを行ってきたのだ。地方私大から公立大への鞍替えは2009年に私立高知工科大学が県立になったのを皮切りに静岡文化芸術大学、長岡造形大学など、全国各地で連鎖反応のように続いた。

 公立大が人気化している要因はいくつかある。

・公立ブランド
・授業料が国立大並み。運営自治体の住民は入学金や学費が割引されるケースもある
・地域に根差した教育環境で地元就職に有利
・私立大に比べ学内環境や研究施設等が充実している
・規模が小さい大学が多く教員一人当たりの学生数が少ない濃密な教育環境

 公立大でもっとも注目を浴びているのは、秋田県にある国際教養大である。

 2004年に全国初の公立大学法人として設立。英語100%授業、1年間の留学義務化など独自のグローバル教育環境を謳い、開学から15年ほどで「リベラルアーツを実現している日本有数の大学」として評価が高まっている。卒業者の就職先も官公庁をはじめ大手商社、メガバンク、電力、運輸、情報通信など錚々たる企業が並ぶ。

 偏差値も70近くあり、入試サイトでは「超難関クラス」との表記も見られる。今年の志願状況は、A日程7.9倍(2月10日に合格発表)、B日程14.5倍だった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

現在はアメリカで生活する元皇族の小室眞子さん(時事通信フォト)
《ゆったりすぎコートで話題》小室眞子さんに「マタニティコーデ?」との声 アメリカでの出産事情と“かかるお金”、そして“産後ケア”は…
NEWSポストセブン
逮捕された元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告(過去の公式サイトより)
「同僚に薬物混入」で逮捕・起訴された琉球放送の元女性アナウンサー、公式ブログで綴っていた“ポエム”の内容
週刊ポスト
まさに土俵際(写真/JMPA)
「退職報道」の裏で元・白鵬を悩ませる資金繰り難 タニマチは離れ、日本橋の一等地150坪も塩漬け状態で「固定資産税と金利を払い続けることに」
週刊ポスト
精力的な音楽活動を続けているASKA(時事通信フォト)
ASKAが10年ぶりにNHK「世界的音楽番組」に出演決定 局内では“慎重論”も、制作は「紅白目玉」としてオファー
NEWSポストセブン
2022年、公安部時代の増田美希子氏。(共同)
「警察庁で目を惹く華やかな “えんじ色ワンピ”で執務」増田美希子警視長(47)の知人らが証言する“本当の評判”と“高校時代ハイスペの萌芽”《福井県警本部長に内定》
NEWSポストセブン
ショーンK氏
《信頼関係があったメディアにも全部手のひらを返されて》ショーンKとの一問一答「もっとメディアに出たいと思ったことは一度もない」「僕はサンドバック状態ですから」
NEWSポストセブン
悠仁さまが大学内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿されている事態に(撮影/JMPA)
筑波大学に進学された悠仁さま、構内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿「皇室制度の根幹を揺るがす事態に発展しかねない」の指摘も
女性セブン
奈良公園と観光客が戯れる様子を投稿したショート動画が物議に(TikTokより、現在は削除ずみ)
《シカに目がいかない》奈良公園で女性観光客がしゃがむ姿などをアップ…投稿内容に物議「露出系とは違う」「無断公開では」
NEWSポストセブン
長女が誕生した大谷と真美子さん(アフロ)
《大谷翔平に長女が誕生》真美子さん「出産目前」に1人で訪れた場所 「ゆったり服」で大谷の白ポルシェに乗って
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』でW主演を務める中井貴一と小泉今日子
なぜ11年ぶり続編『続・続・最後から二番目の恋』は好発進できたのか 小泉今日子と中井貴一、月9ドラマ30年ぶりW主演の“因縁と信頼” 
NEWSポストセブン
第一子出産に向け準備を進める真美子さん
【ベビー誕生の大谷翔平・真美子さんに大きな試練】出産後のドジャースは遠征だらけ「真美子さんが孤独を感じ、すれ違いになる懸念」指摘する声
女性セブン
同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン