「生理に対してネガティブな印象を持っている人が多いですね。“生理は体の浄化”など、スピリチュアルな思想とつなげてとらえる人もいます。学校や家庭において、生理を科学的に教えてもらっていないことが原因でしょう」
そう話すのは、丸の内の森レディースクリニック院長であり、産婦人科医の宋美玄先生。
いま、「生理のことをオープンに話そう」という大きな時代の流れがある。コミック『生理ちゃん』(KADOKAWA)が大きな反響を呼び、ついには映画化。大阪の百貨店では、生理中の従業員が「生理バッジ」をつけるという試みが賛否両論を呼び、話題になった。日陰の存在であった生理が、近年になって表舞台に顔を出しはじめたという印象だ。
生理と言えばあくまでも、バレないようにこっそりと対処するものであり、表立って話題にするのがはばかられるという人もいることだろう。
「生理は、女性なら誰もが経験する単なる生理現象です。胃や腸などの内臓が働いているのと同じように、女性ホルモンや内性器が働くことによって生理になる。それは、体の中で起こるさまざまな現象のうちの一つにすぎません」(宋先生)
多くの女の子は10歳前後で初潮を迎える。もちろん個人差はあるが、小学生の間に生理を経験することがほとんどだ。そのとき母親は、どのようにして生理を伝えればいいのだろうか。
自身も小学生の女の子の母親である宋さんは、「科学的に中立な立場から、正しいことを教えてあげて」とアドバイスする。
しかし、生理をオープンに話す時代とはいえ、教える自信が持てなかったり照れくさく感じたりして、子どもに伝えづらい人も多いことだろう。
「そうしてじゅうぶんな知識が得られなければ、子どもは、ネットで検索するなどして自分なりに対処するしかなくなってしまいます。でも、ネットなどで得られる情報は正しいものばかりだとは限りません。だからこそ、しっかりと教える必要があるんです」
話を切り出しにくいなら、母親が生理のときに一緒に入浴するなど、子どもが関心を持って問いかけてくるような機会をつくってみるのもいい。
「ママ、どうして血が出ているの?」と聞かれたら、そのときがチャンスだ。
「生理のメカニズムから女性の体の構造、妊娠に至るまで、ぜひじっくりと話をしてみてください。そのとき、『生理は体の浄化』『赤ちゃんはコウノトリが運んでくる』というようなファンタジーをまじえるのではなく、事実だけをしっかりと伝えてもらえればと思います」
ただしそのためには、まずは母親が生理について知る必要がある。自身が適切に教えてもらっていないがゆえに、誤解していることや、知らないままなんとなくやりすごしていることなどもあるだろう。
たとえば、経血は膣から体外に流れ出るだけではなく、体内に向かって逆流もしているということをご存知だろうか。また、100年前と比べると、一生のうちに経験する生理の回数は9倍ほどになっているということを、知っているだろうか。
このように、生理については意外と知られていないことも多いもの。ぜひ、この機会に学んでみてはどうだろうか。そうして得た知識は、子どものためになるのはもちろん、母親自身の役にも立つはずだ。
●文・西門和美