自治体の定期健診や人間ドックには、採血して肝機能や腎臓機能、血糖値などを調べる血液検査がつきものだ。検査そのものの精度はどの医療機関も変わらないものの、その数値を“どう読み解くか”はそこに勤める医師によって判断が異なってくる。
医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師がいう。
「糖尿病の診断基準となる数値として『空腹時血糖』と『HbA1c』がありますが、空腹時血糖値は前日の過ごし方でも変動するので、医師が注意深く見るのはHbA1cのほうです。
この値は、若い人は厳格に見る必要がありますが、高齢になるにつれて基準値に当てはまらなくなってくるという研究があります。また、糖尿病治療薬を使用することで血糖値が下がり過ぎてしまう『低血糖』のリスクも年齢とともに高くなってしまうことなどから、2016年に発表された日本老年医学会のガイドラインでは『個々の高齢者ごとに個別の目標や下限を設定してもよい』とされています。
最近ではある程度の年齢になれば、『治療で苦しい思いをするよりも、QOL(生活の質)を優先したほうがいい』と考える医師が増えている。もちろん数値が高すぎるのは問題ですが、私は70歳を過ぎたらHbA1cにこだわりすぎないで既往症などから総合的に判断を下すのが良いと思っています」(上医師)
血圧検査も、医師によっては「基準値を超えているから治療が必要」という“基準値至上主義”が行なわれかねない検査だ。
現在、厚労省が定めている「判定値(基準値)」は、上(収縮期)で130mmHg以上だと保健指導の対象となり、140mmHg以上だと受診勧奨とされる。