チャンピオンズCの1、2着であるクリソベリルとゴールドドリームが世界最高賞金(1着11億円!)のサウジカップに参戦することになり、今年のフェブラリーSは混戦模様となった。競馬ライターの東田和美氏が分析する。
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フェブラリーSといえば関西馬の牙城だ。1997年にGⅠに昇格、2000年からは関西馬が18連勝を含む19勝。2着も19回で掲示板を独占すること9回。2015年は2頭の地方所属馬以外がすべて関西馬。この間、関東馬で勝ったのは2018年のノンコノユメだけ。前哨戦の東海Sでは16頭中14頭、根岸Sでは出走16頭すべてが関西馬だった。
もっとも平成以降の関西馬優勢はこのレースに限ったことではなく、菊花賞の26勝対5勝をはじめ3歳クラシックはすべて関西馬が20勝以上。東西14勝(外国馬3勝)ずつの安田記念以外のGⅠはすべて関西馬が勝ち越している。昨年も東が6勝、西が18勝だった。
しかし、フェブラリーSでは結果だけでなく、出走頭数も関西馬が圧倒している。とくにここ10年は関東馬25頭に対し、関西馬が128頭。昨年も関東馬は14頭中1頭で13着だった。
とはいえ、馬券を買う側からすれば、西も東もない。今年出走する関西馬はすべて東京競馬場を経験しているし、交流戦でもおなじみの馬ばかりだ。今年は新旧の“両横綱”が、より高い賞金を求めて遠征に出ることから、居残りの関西馬は一長一短。過去23年のうち13回は前走1着の馬が勝っているが、今年の出走馬で連勝を目論んでいるのは、根岸Sで初ダートを克服した安田記念馬モズアスコットと、昨年浦和のゴールドカップを勝って中央へ再入厩したブルドッグボスだけ。インティは昨年このレースを勝って以来勝ち星がないし、サンライズノヴァ、ヴェンジェンス、ケイティブレイブは中央のGⅠでは馬券対象になったことがない。
ならば、今年はたった2頭の関東馬でも勝負になる。
アルクトスは調教の動きがよかったようで人気の一角に押し出されたが、中央のGⅠは初体験。だが、前々走のプロキオンSでは、今回出走するミッキーワイルド、ヴェンジェンス、サンライズノヴァ、キングズガードを破っている。サンライズノヴァの2着だった前走南部杯はJpnⅠ初挑戦だったが、ゴールドドリーム、モジアナフレイバーに先着、5月の欅Sではワンダーリーデルに勝っている。通算13戦7勝、東京コースでは6戦5勝2着1回とパーフェクト連対。まだ5歳で伸びしろがありそうだ。
田辺騎手と言えば、2014年のこのレースで単勝272倍の最低人気コパノリッキーを勝たせている。安田記念のロゴタイプも8番人気。GⅡ、GⅢ計30勝で単勝の平均配当は1400円に迫る。昨年の単勝回収率は90%を超えており、栗田厩舎の馬では10勝をあげている。この馬には10回続けて騎乗しており、手の内に入れている。
もう1頭の関東馬デルマルーヴルも前走初のJpnⅠの川崎記念で3着と健闘。ミューチャーリー、ケイティブレイブに先着した。今年から美浦に拠点を移したM・デムーロはこのレース2勝で連対率5割。チャンピオンズカップでも、12番人気のサンビスタを勝たせるなど2勝している。皐月賞のダイワメジャー、ジャパンカップのスクリーンヒーローなど、GⅠでは人気薄を激走させている印象が強い。
3頭出走する地方所属馬もいわば「関東馬」。ノンコノユメは一昨年の覇者で昨年暮れの東京大賞典2着、他の2頭も交流GⅠで中央馬に先着している。3頭とも鞍上は南関東の名手だ。ちなみに昨年のJBCスプリントで藤田七菜子騎手の夢を打ち砕いたブルドッグボスにしても前走までは浦和の馬だった。
チャンピオンズCの1、2着馬だけでなく、今年は東京大賞典、川崎記念、東海Sの1着馬が不在。人気の中心はモズアスコットだろうが、「関東馬」の勢いに期待したい。2頭が馬券対象になるのは、メイセイオペラが勝った1999年以来のことになる。
●ひがしだ・かずみ/伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター。