レオナルド・ダ・ビンチの言葉だと言われる「幸運の女神には前髪しかない」は、チャンスは一瞬しかやってこないので、逃してはならないという意味で使われている。その千載一遇の一瞬を逃さない人のことを勝負師と呼ぶ。将棋と麻雀の世界で伝説的な強さを見せた勝負師たちの言葉を紹介する。
■あんたは強いんだが、敗因は僕がプロだということを忘れとったことだ。
『升田幸三物語』 (東公平著、角川文庫、2003年)
・升田幸三(将棋棋士)1918~1991
多くの新手を生み出し、将棋連盟から「実力制第四代名人」の称号を贈られた大棋士・升田幸三。引退後、「史上最強のアマ」と評され絶頂期を迎えた真剣師・小池重明と対局した。足腰が弱り、夫人同伴で長い廊下を這って対局場にやってきたが、 終わってみれば、“角落ち”のハンデ戦で完勝。宴席後、「小池君ありがとう。君は、“升田健在なり”を宣伝してくれた」と颯爽と帰っていったという。
■「運」を手に入れたきゃ、ピンチの時に役立つ「勘」を自然界で磨くことだな
『anan』2015年7月22日号(マガジンハウス)
・桜井章一(雀士)1943~
麻雀の代打ち稼業で「20年間無敗」を誇り、「雀鬼」の異名を取った伝説の雀士・桜井章一。厳しい勝負の世界を生き抜いた男は、世間の人々が求め続ける「運」の正体を、「いいことが繋がる、続いてほしい」という「欲」だと喝破した。
桜井いわく、本当の「運」は掴もうとすれば逃げる。「勘」を研ぎ澄ました者にだけ、向こうから寄ってくるものだ。
※週刊ポスト2020年2月28日・3月6日号