今年4月に「改正児童虐待防止法」と「改正児童福祉法」が施行され、体に苦痛や不快感を与える罰は、たとえ、しつけのためでも禁止となる。子供をきちんとしつけるためなら体罰もやむを得ないとされてきたこれまでの“しつけ”の功罪について、この機会に一緒に考えてみたい。
虐待には、身体的暴力だけでなく激しい叱責も該当する。口頭で叱るだけでも、子供に恐怖心を与えれば、心理的虐待になる。
厚生労働省「福祉行政報告例」(平成30年度)の「児童相談所における児童虐待相談の対応件数、児童虐待相談の相談種別×児童虐待相談の経路別」から編集部で作成したデータによると、身体的虐待25.2%、性的虐待1.1%、心理的虐待55.3%、保護の怠慢・拒否(ネグレクト)18.4%となっている。
では、具体的な実例から子供にどのような影響を与えているかを考えてみたい。
◆比較して育てるとあきらめる癖がつく
「うちの夫は、下の娘がいい評価をとってきても、“お姉ちゃんはもっとできた”などと言います。それを聞いてもっと頑張ってほしいと思っているようですが…」(41才・会社員)
きょうだいなどを引き合いにする場合、「〇〇ちゃんができていたことを、あなたもできたらうれしいね」など、前向きな言葉がけなら問題ない。“子ども心理”に詳しい山梨県立大学教授の西澤哲さんはこう言う。
「しつけとは、子供が自分をコントロールする力“自律心”をつけるよう手伝うこと。それなのに、恐怖や痛みで言うことを聞かせようとすれば、罰が与えられないと何もできない人間になったり、親からされてきたように、恐怖を与えて人を動かそうとする人間に育ちます。また、きょうだいなどと比較して劣等感を植えつけられれば、自分はダメな存在、不要な存在だと思い込みます」
そうなると、「自分にはどうせできない」などと、最初からあきらめるクセがつくという。親は、しつけの方法がほかにないか、考え続ける習慣をつけるのがおすすめだ。
※女性セブン2020年3月5日号