プロ野球の監督や政治家、将棋棋士や雀士など、勝負師たちは忘れられない名言を遺す。映画を見ていると、それはフィクションだと承知していても、生きた言葉としていつまでも心にとどまる言葉がある。惜しまれつつこの世を去った名優たちが演じた「勝負師」の名セリフを、映画評論家の秋本鉄次氏が紹介する。
■牛のクソにも段々があるんでぇ
宍戸錠『仁義なき戦い 完結篇』(1974年公開)
「宍戸錠演じるヤクザの大友が対立組織の組長(松方弘樹)に啖呵を切った台詞。世間から見たら牛のクソのような存在でも段々(序列や階級)が存在するという男を感じる台詞ですね」(秋本氏)
■お前もあと2、3分で死ぬ。死ぬ前に好きな歌でも歌え
萩原健一『いつかギラギラする日』(1992年公開)
「現金強奪後、仲間割れを起こす萩原健一演じるギャングのボスの神崎と角町(木村一八)がナイフによる一騎打ち。神崎が角町の喉を突き刺し浴びせた後の手向けとも取れる言葉」(秋本氏)
■俺が最前線を見せてやる! 参謀ども、表に出ろ!
梅宮辰夫『大日本帝国』(1982年公開)
「サイパン島で組織的な抵抗力を失なって民間人と共にジャングルを彷徨う日本軍の敗残将校がヤケになって酒を酌み交わす中、兵曹の梅宮辰夫がゲキを飛ばして仲間たちと反逆してみせた」(秋本氏)
※週刊ポスト2020年2月28日・3月6日号