世界的に猛威を振るう新型コロナウイルス。すでに「水際対策」ではなく「蔓延期」──2月21日、日本感染症学会などが使った言葉が、事態の深刻さを物語っている。もはや感染拡大は前提といえる。あなた自身が、あるいは家族が発熱し、感染が疑われる場合、どう対処すればいいのか。大事なのは、重症化を避けること。そのために絶対にやってはいけないことがある。
秋津医院院長の秋津壽男さんは「いまは熱が出ても解熱剤はのむべきではない」と指摘する。
「体が熱を発しているのは、体内で免疫が異物であるウイルスと闘っているからです。現在までのところ新型コロナウイルス感染による症状の6~7割は軽症で済むことが多く、自分の体力で打ち勝てる敵です。熱やだるさは体が“私に任せておいて”と伝えている信号なのに、それを無視して解熱剤を使って熱を下げてしまうと、体内の免疫力もダウンさせてしまい、その結果、重症化のきっかけを与えてしまいます」
解熱作用のあるロキソニンやボルタレンなどの鎮痛剤も、同様に体の症状を無理やり抑え込むため、服用すべきではないと秋津さんは続ける。
最も大きな問題は、こうした薬で本当の症状を隠してしまうことだ。新型コロナウイルスが疑われる条件の1つに「37.5℃以上の発熱が4日以上続く」とある。解熱剤で強制的に下げて外出することは危険極まりない。
実際に、感染が疑われる中国人観光客が解熱剤を使って空港の「体温監視」をくぐり抜けたことが、感染拡大を招いたという指摘もある。
「新型コロナウイルスに感染しているなら、解熱剤や鎮痛剤で熱を下げても、ただのごまかしに過ぎません。他人にうつすリスクはもちろん、重症化を引き起こせば、取り返しのつかないことになるかもしれない。いまは発熱したら、とにかく様子を見ることです」(前出・秋津さん)
ウイルス対策にと、抗生物質をのむことも大きな誤りだという。
「過去にかぜなどで処方された抗生物質が自宅に残っていたからと、のむ人もいるかもしれません。抗生物質とは菌に効く薬で、ウイルスには効果がない。しかも無駄に抗生物質をのむと体内に耐性菌ができてしまい、実際に細菌に感染したときに抗生物質が効かなくなります」(前出・秋津さん)
体調不良になると栄養ドリンクをグビグビのみ干す人がいるが、これも逆効果になりかねないという。
「しっかりと休息をとって栄養補給の一環として摂取するならいいですが、仕事の合間などに発熱や倦怠感を抑えるためにのんでもそれはごまかしているだけなので、効果はありません。むしろ疲労が蓄積して免疫力が低下し、重症化しやすくなります」(前出・秋津さん)