NHKの大河ドラマ『麒麟がくる』は、主人公・明智光秀の“謎に包まれた前半生”に焦点を当てている。2月までに放送は6回を数えたが、耳慣れない登場人物名が続き、その複雑な関係性に戸惑う視聴者も多いかもしれない。歴史作家の島崎晋氏が解説する。
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『麒麟がくる』が面白い。番組ホームページも充実していて、大河ドラマ好きとしてはありがたい限りだが、登場人物が多く、物語も京から美濃、美濃からまた京へと舞台が飛び飛びなので、少々混乱している人もいるかもしれない。ここではそんな読者のために基礎的なところを整理しておこう。
ときは戦国時代。室町幕府が存在するとはいえ、その支配は後の江戸幕府とは比較にならないほど形骸化していた。江戸幕府と同じく全15代を数えながら、3代・足利義満を頂点として将軍の権勢は弱まるばかり。幕府の実権は将軍の補佐役である「管領(かんれい)」や都である京周辺の治安を司る「侍所頭人(さむらいどころとうにん)」の手に移っていった。
地方に目を転じれば、「守護(*注1)」や「守護代(*注2)」による支配から、戦国大名による領国支配へと変化した時期でもあった。ドラマ第6回までに登場した人物では、美濃の斎藤道三(本木雅弘)、尾張の織田信秀(高橋克典)、今川義元(片岡愛之助)が挙げられる。
【*注1:守護/室町時代には一国全体の支配権を確立した。守護大名とも】【*注2:守護代/数か国を兼ねる守護が任国の管理のために派遣する家臣】