誰もが夢見るものの、なかなか現実にならない夢の馬券生活。調教助手を主人公にした作品もある気鋭の作家、「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆する須藤靖貴氏が、人気に応えている騎手についてつづる。
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騎手の評価について、さまざまな尺度がありましょう。スタートのさりげなさ、序盤の折り合いのやわらかさ、位置どりの巧さ、追い出しのタイミングの的確さなどなど。それらは分かりにくいことかもしれぬが、はっきり見えるものに「入着が単勝人気順以上」がある。
これは騎手にとってかなり重要らしく、陣営からも「ようやった!」と評価される。16頭立ての2ケタ人気だった馬で穴を開けると、騎手は「ざまあみやがれ」の痛快な心持ちになるという。
では逆のケースはどうだろう。単勝オッズ1倍台、ガチガチの1番人気馬に騎乗するとき。勝って当たり前だぞ! 2着でも3着でもダメだ! そのプレッシャーは甚大らしい。
レースではキツくマークされるだろうし、間違いなく目標にされる。圧倒的人気馬と戦うとき、ある騎手は「その馬をじっとマークして、どこで抜き去るかをシミュレーションする」と目を輝かせた。思い切った競馬(いささかムリ気味の大逃げとか)を仕かけてくるチャレンジャーもいるだろう。そんなのばかりと戦うのである。
そのせいなのかどうなのか、単勝1倍台の勝率は5割以下、期待したほどでもないそうだ(2019年)。ミスター1倍台のC・ルメールでも4割5分程度だった。