先日、日本人シェフがミシュランフランス版で日本人初の三ツ星を獲得し、大きな話題を呼んだが、同様の評価はレストラン業界以外にも及んでいるようだ。昨年12月に刊行された『カミカリスマ ヘアサロンガイド(KAMI CHARISMA Hair Salon Guide)』が、美容業界をざわつかせているという。
同書では、東京都内の美容師をカット部門とメンズ部門で一つ星から三ツ星で評価し、パーマ、カラー、トリートメント&スパ部門から各サロンを選出して紹介している。言ってみれば「カリスマ美容師」を決める“美容師ミシュラン”といった様相だが、本家のミシュランとは関係はない。
この美容師ミシュラン、本当の狙いは国内市場ではないようだ。代官山でヘアサロンを経営する美容師・Aさんが語る。
「観光コンサルティングを手掛ける企業を中心として同企画の委員会が立ち上がったそうで、いわば『インバウンド向けの観光ガイド』の一環としてヘアサロンに狙いをつけたということでしょう。実際に、日本のヘアサロンは世界的にも繊細でレベルが高い技術を誇ります。昨今、オルチャン風(韓国の女子風)ヘアやLA風ヘアを売りにしているサロンも多いですが、そういったサロンには海外の女の子も訪日して通うほどです」(Aさん)
一方で、美容師業界からは疑問の声も上がっているという。インスタグラムでも数万人のフォロワーを持つ、都内の有名ヘアサロンで勤務するスタイリスト・Bさんはこう語る。
「もちろん選出されたスタイリストは全員、超有名人ですし、すばらしい実力の持ち主であることに変わりはない。ただ、サロン業界の人間から見ると『あの人が選ばれなくて、あの人が選ばれるのはおかしい』という面もある。評価項目についても、『世界への発信力』『スター性』『今をつかむ表現力』など、曖昧な指標が並んでいます。
一番謎なのは、カミカリスマ実行委員会会長が、政治家の麻生太郎さん(副総理兼財務相)だったこと。美容業界と何の関連があるのか、正直疑問です」(Bさん)
麻生氏を実行委員会会長に迎え、厚生労働省、国土交通省観光庁、日本政府観光局(JNTO)が後援する“官製企画”として登場した「美容師ミシュラン」は、はたして目論見通りインバウンド客を呼び込むことができるか。