細菌には効果があるが、ウイルスには効かないのが抗生物質だ。そのため、ウイルス性疾患であるかぜやインフルエンザに抗生物質は効かないというのは常識。“効かない”どころか“マイナス”になる恐れもある。新潟大学名誉教授で医師の岡田正彦さんはこう語る。
「ウイルスが原因のかぜに細菌を殺す抗生物質が効かないのは医師もわかっています。しかし、かぜで免疫力が落ちている患者が、万が一、別の細菌に感染し、肺炎などになったときに訴えられないように、と処方している医師が多い」(岡田さん・以下同)
“万が一”で首を絞められるとは聞き捨てならない。
「抗生物質をのみ続けていると、正常な菌まで殺して下痢を引き起こすばかりか、別の大きな病気にかかるリスクがある。さらに、抗生物質に耐性を持った新型の菌の発生を助長し、最悪の場合、世界中に悪影響を及ぼすことも想定されるのです」
こうした懸念から、欧米では抗生物質の処方には極めて慎重だ。安易に“乱用”しているのは、日本と中国くらいなのだという。MRSA(多剤耐性黄色ブドウ球菌)の出現は抗生物質の濫用が一因とされる。さらに、偽膜性大腸炎、全身に発疹や水ぶくれが出る指定難病「スティーヴンス・ジョンソン症候群」の原因にもなるというのだ。
「市販薬は一時しのぎだと考え、1週間程度でやめましょう。それ以上連用すると、副作用が勝ったり、重大な病気を見落とす可能性もあります」
“薬は時として毒になる”ことを肝に銘じたい。
※女性セブン2020年3月12日号