激しくかき鳴らされるギターをバックに、優しげな甘い歌声が、時にハスキーなシャウトを響かせる──。この艶やかなロックナンバーは、今年2月にリリースされたばかりの『HIDE AND SECRET』。直木賞作家である道尾秀介(44)のメジャーデビューシングルである。
「そもそも父がピアノの調律師だったので、音楽は身近な存在でした。子供の頃からたまにピアノを触ったりしていて、本格的に音楽にのめり込んだのは、中学生になってからですね」
ロックバンドX(現X JAPAN)のアルバム『BLUE BLOOD』のサウンドと、メンバーのギタリスト・hideに影響を受け、すぐにギターを購入。難易度の高いテクニックを、何度も何度も練習した。
その後、ヘヴィメタルに「ドハマリして」、高校生からはメタリカ、メガデス、スレイヤーといったスラッシュメタルのコピーバンドで、ライブハウスのステージに立つまでになる。
「でも、人が作ったものの真似を続けていると、飽きるんですよね。どんどん退屈になってきて。それで、自分で曲を作るようになったんです」
道尾は小説を書く際、「自分が読みたいと思うものを書く」と公言している。そこかしこに仕掛けられた読者をあっと言わせるサプライズや、作品ごとに変わる老若男女さまざまな主人公、どんでん返しのラストなど、常に新しいことに挑戦してきたのも、自身が書くことに飽きないためなのだろうか。