新型コロナウイルスの感染拡大を受け、実施予定だったアーティストのコンサートや舞台などが軒並み中止となるなど「自粛ムード」が続いている。そんな状況を少しでも打破しようと、企業が独自の施策を打ち出すケースも出てきた。
3月2日から全国の小学校、中学校、高等学校、特別支援学校が臨時休校となることを受け、小学館は2日から少女漫画誌『Sho-Comi』の最新号(2020年6号)のほかバックナンバー2冊(2020年3・4合併号と同5号)の電子書籍の「無料公開」を始めた。
『Sho-Comi』編集部は発売中の最新号を急遽、無料公開へと踏み切った理由をこう発表した。
「休校により、教室での時間、放課後の部活、大切な卒業式…本来あたりまえに過ごすはずだった時間が失われてしまったことに、心が痛みます。日常を取り戻すまでの間、せめて心の中では思いっきり動いて、楽しんで、ときめいて欲しい。その時間が少しでも心の安らぎを得ることになればと今回の無料公開を実施することにしました」
元テレビプロデューサーで上智大学教授(メディア文化論)の碓井広義氏はこうした取り組みは、「数少ない明るい話題だ」と語る。
「非常にいいことだと思います。子供にとって今回の臨時休校は大人や社会の事情によるもので、辛い出来事でしょう。外出もしにくい状況のなかで、『漫画が無料で読める』というのは、やっと“良かった”と思えるニュースではないでしょうか。
さらに今回の無料公開で、初めて『電子書籍』を目にする子供もいるかもしれません。読書へのハードルが下がるきっかけになる期待もありますし、1冊の本を読むことで他の本との出会いのきっかけにもなる場合もある。私はこれを“玉突き読書”と読んでいますが、休校をマイナスに捉えるだけではく、読書などを通じて少しでも子供たちの知見が広がると良いですね」
臨時休校の要請発表から数日の間で、他にも様々な形で支援や無償提供を発表する企業が出てきている。
外食産業大手のワタミは、共働きなど休校措置に対応できない家庭の子供たちを支援する目的で、子供向けに弁当を無料で宅配すると発表した。水戸市の納豆メーカー「だるま食品」も、給食用に納品予定だった納豆1000個を無料配布して話題となった。
突然の臨時休校で、最も心を痛めているのは子供たちだ。春休みが明けるまで、そうした子供たちへ向けたサービスの「無償提供」という波は広がりを見せるかもしれない。