高血圧などの慢性疾患の場合は、症状の改善がみられるまで長期にわたって薬をのむ必要があるケースが多い。血圧を下げる降圧薬には、作用のメカニズムの違いによっていくつかの種類がある。
新潟大学名誉教授で医師の岡田正彦さんが解説する。
「多く使われる降圧薬は2種類あり、ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)は腎臓を悪くする副作用が指摘され、英国では処方をやめたことで多くの患者の腎臓疾患を防いだという報告があります。もう1つがARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)で、こちらはのみ続けると下痢や胃腸炎を起こしやすいことがわかっています」
いずれにせよ、処方薬なので、医師や薬剤師と緊密にコミュニケーションをとりつつ、服用することが大切だ。降圧薬にはほかにもさまざまな種類がある。岡田さんが続ける。
「もっとも古くからある降圧薬のサイアザイド系利尿薬は、尿をたくさん出して血圧を下げる薬で、安全性が高いというデータがある。しかし、そもそも大前提として、特に高齢者が降圧薬をのみ続ける意義に疑問を感じます。若いうちから高血圧が続くと晩年に脳梗塞を発症しやすいものの、高齢になってから血圧が高くなった人の脳梗塞を薬で予防できるというデータは存在しないのです」
銀座薬局代表の薬剤師・長澤育弘さんが指摘する。
「降圧薬としてよく用いられるカルシウム拮抗薬は、血管の収縮にかかわるカルシウムイオンの動きを阻害して血圧を下げる薬です。これは1年間の継続した服用で歯が抜けた例が報告されている。歯茎は細かな血管が張り巡らされているので、薬による急激な血圧の変化の影響が出やすいと考えられています」
※女性セブン2020年3月12日号