食べすぎて胃が痛いときなど、つい手が伸びるのが市販の胃薬だ。新潟大学名誉教授で医師の岡田正彦さんはこう言う。
「市販の胃薬には、ほぼ副作用はない。常備薬として救急箱に入れておくのは問題ないでしょう。ただし、説明書にある用法用量を守り、1週間くらいをめどに、症状が治まったらやめるのが大原則です」
その理由は、あまりにも“よく効きすぎる”から。市販の胃薬として売られている「H2ブロッカー」。副作用は少ないが、のみ続けると問題がある。銀座薬局代表の薬剤師・長澤育弘さんはこう解説する。
「H2ブロッカーは強力に胃酸を止める薬で、かつては医師が処方する薬でした。よく効くだけに連用はよくありません。たとえば胃がんや胃潰瘍が起きていても、H2ブロッカーをのんでいると痛みを感じられない。重篤な症状に気づけず、進行させてしまうリスクがあるのです。胃がんは初期であれば助かることが多いのに、進行をわからなくしてしまう」
さらに岡田さんは別の危険性を示唆する。
「カルシウム代謝に影響を与えるため、骨がもろくなり骨折しやすくなるという副作用がアメリカの研究で報告されています。高齢者の場合、骨折をきっかけに寝たきりになってしまう場合もあり、良識のある医師なら、患者さんから求められても長期の処方はしません」
あるH2ブロッカー胃腸薬は、「3日服用しても効果がなければ中止すべき。2週間以上の連用は避けるように」と外箱に記載しているので、しっかり守りたい。
PPI(プロトンポンプ阻害薬)は現在も処方箋が必要な胃薬の主流で、こちらも恐ろしいリスクを持っている。
「新国民病ともいわれる逆流性食道炎(逆食)になると、長期に処方されることが多いのがPPIです。2017年に香港大学が発表した論文では、PPIを3年以上服用した患者は胃がん発症が8.3倍になったと報告されている。服用期間が1~2年で5倍、2~3年で6.6倍と、かなり高い。すでに長期間服用している人は主治医に相談した方がいいでしょう」(長澤さん)
胃薬をしっかりのんだせいで胃がんになったのでは目も当てられない。
※女性セブン2020年3月12日号