役者のキャリアやスキルが活きるのも演出や脚本の力あってこそである。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。
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初回スタートは好調。しかし回が進むごとにジリジリと視聴率が下降気味となったNHK大河ドラマ『麒麟がくる』(日曜午後8時)。2話17.9%、3話16.1%、4話13.5%、5話13.2%、6話13.8%(関東地区)という推移で、心配もささやかれていた昨今。しかし、第7話は15%と、1.2ポイント上昇してみせました。いよいよ反転攻勢の兆しか? 上昇した理由は、やはり川口春奈さん効果、ということでしょうか。
沢尻エリカさんの代役として大抜擢された帰蝶役・川口さんが、主人公・明智光秀(長谷川博己)とのからみで大いに目立つ展開となった第7話。物語は……織田信秀(高橋克典)が斎藤道三(本木雅弘)と和議を結ぶことに。その条件として道三の娘・帰蝶を息子・信長(染谷将太)の妻にすることを要求。しかし、帰蝶はこれを拒絶。光秀に娘を説得するよう命じる道三。
光秀にひそかに思いを寄せている帰蝶は、「信長には嫁ぎたくない」と心のうちを見せる。一方、やはり光秀を慕いつつ苦悩する戦災孤児の駒(門脇麦)。二人の女性にはさまれた光秀は信長の姿を見に……とにかく、川口さんのすっくとした立ち姿が印象的です。大河ドラマはもちろん時代劇への出演も初めてという川口さんですが、いやいやどうして。最初から帰蝶に選ばれていたかのような堂々たるたたずまい。
お姫様役にピタリの凜とした風情と美しさ。外部に影響されない芯の強さも感じられ、武将の娘、そして信長の妻役の気迫は十分です。過去、大人気となった大河ドラマ『篤姫』を彷彿とさせる気概も。ここで視聴者の共感を集めることができたら『麒麟がくる』の人気に一層拍車がかかる可能性もありそう。
それとは対照的に、第6話までどうもしっくりこない残念キャラがいました。門脇麦さん演じる駒の存在です。駒は医者・東庵に拾われた戦災孤児。という史実にはない「架空の少女」だからこそ、使い方にはリスクも潜む。よく考えないとご都合主義的、安易な挿入要素になりがち。
意図した演出なのかもしれませんが、駒の風情が戦国の世から浮いている。
小さなちょんまげを結った髪、おてもやん風メイク、しゃべり方も妙に現代風で、口を尖らせる表情も気になる。ど派手なピンクの着物も目障り。光秀と同衾したりと、とにかく物語の中でやたら目につく存在。「こんな小娘をなぜ光秀が相手をしなければならないのか」とか、よけいな疑問が湧いてきてしまい冷や水効果絶大です。そう、駒を見ているとふっと夢から覚めてしまう。ドラマ世界に酔いしれたいのに、いきなり現実に引き戻されてしまう感じ。