結婚の「分岐点」をレポートするシリーズ。今回は、還暦を迎える男性との入籍を控えるあかねさん(45)に話を聞いた。結婚しない人、事実婚を選ぶ人、離婚する人も増え、結婚を取り巻く環境は多様化しつつある。一方で不倫に向けられる強烈なバッシング、裏を返せば結婚の価値は揺るぎないようにも見える。3年の同棲を経て結婚に至ったあかねさんの選択から、改めて結婚を考える。
* * *
◆距離を縮めたのは転職相談だった
「そろそろ籍を入れようかと言われて、嬉しかったんです。と同時に、あれ? 私、結婚したかったんだ、と、自分でも驚きました」
あかねさん、45歳。今年、入籍予定だ。お相手は同棲して3年になる康史(やすし)さんで、今年還暦を迎える。15歳差カップルは、節目の年に、結婚することになった。
とはいえ、あかねさんと康史さんは、これまでもパートナーであることを家族や親しい友人などに公表してきた。二人とももう子供を望んでおらず、入籍しても暮らしに変化はないだろうという。だからこそ、籍を入れようと言われて喜んでいる自分に、驚いたのだ。
そもそもの二人の出会いに遡ろう。
行きつけの飲み屋で、長年、顔見知りではあったが、話すようになったきかっけは、あかねさんの転職だった。
「勤めていた会社で行き詰まっていたんです。上司とうまくいかず、人事にも不満がありました。そのころ私は40歳手前。転職するにはラストチャンスかなと。やはり、年齢の壁はあると思っていたので。彼は、店でたまに見かけるおじさん程度の認識で、それまで喋ったことがなかったんですが、転職を考えているという話をマスターにしたら、あの人、専門だから訊いてみたらと言われて、喋るようになったんです」
康史さんが人材紹介などの仕事をしていると知ったあかねさんは、以来、相談をするようになる。PRの仕事をしてきたあかねさんにとって、今後、どのようなキャリアが最適なのか、また、どのような選択肢があるか、康史さんの話は大変参考になった。だが、得たものはそれだけでなかった。
「気が合ったんです。私、あまり人に相談しないタイプだったのですが、彼は年上のせいか話しやすい。一方で、若く見えるので、それほど年齢差を感じない。次第に、1週間に1回は会うようになって、あれ、いいんじゃない? と思っていたら告白されました」