新型コロナウイルスの感染拡大で、日本中が混乱するなか、感染の有無を診断する検査の実施件数はなかなか増えない状況だ。実際の臨床現場では、医師が「検査が必要」と判断したら保健所に連絡し、さらに保健所が地方衛生研究所(衛生研)など実際に検査をする機関に依頼する流れとなっている。3月5日にもPCR検査に公的医療保険が適用されるが、実施される医療機関は限定的だと見られる。
政府の専門家会議は「心配だからと病院に行くのは避けて」と訴えるが、線引きは曖昧だ。ナビタスクリニック理事長の久住英二さんはこう話す。
「症状に線を引いて“受診OK”と“受診NG”を分けることは不可能です。感染してもかぜの症状しか出ないのに、“症状が出ても4日間は家でじっとしてろ”というのはそもそも無理な注文。検査をせず家に閉じ込めると、“自分は感染したのではないか”との不安が増すばかりです」
検査するかどうかの最終的な判断を、保健所が担う仕組みにも問題がある。
「医師や患者からの電話で、検査の有無を保健所が判断するのはおかしいんです。保健所で実際に電話対応しているのは必ずしも医師ではなく、保健師や薬剤師もいます。民間機関を排除したので検査数に限りがあり、多くの保健所職員が“検査依頼を断ること”を仕事にしている。実に不毛です」(前出・久住さん)
坂根Mクリニック院長の坂根みち子さん(内科・循環器内科)は、「医療従事者は神経戦になっている」と指摘する。