認知症を患っている人の中には、一日中カーテンを閉めたまま過ごす人も少なくない。四六時中、薄暗い部屋でぼーっとテレビを眺めている人もいるという。
なぜ、高齢になるとカーテンを開けなくなるのか──。
その謎を探りつつ、認知症の人も思わずカーテンを開けたくなる誘い方を、医療法人社団プラタナス 桜新町アーバンクリニック 作業療法士の村島久美子さんに聞いた。
「高齢者の多くが患うといわれる白内障の影響で、まぶしさを感じやすくなることがあります。特に手術直後はそれが顕著にみられます。
また元気に見えても体力、筋力の衰えは否めず、窓際まで行くのも億劫になります。認知機能の衰えに伴って外への興味も失われつつあるので、カーテンを開けようという気力も、発想さえうせることもあるのです。若い家族には思いがけないことかもしれませんが、理解が必要です。
でも光を浴びることはとても重要。高齢者にとって大切な質のよい睡眠や骨の生成にもかかわります。そして何より“外の風景”は季節や時の流れを感じ、人や社会に触れる重要な機会なのです。
認知症があると季節や時間、場所がわからなくなりやすいのですが、毎朝カーテンを開けることで多くの情報が得られます。私たち介護スタッフも、窓の向こうを指さしながら『春らしい日差しですね』『桜が咲きそう!』などと、具体的な季節や時間がわかるようにお声掛けしています。
ご家族も外への興味をそそるよう誘ってみてください」
※女性セブン2020年3月19日号