胃カメラ検査には、口から入れる方法(経口内視鏡)と鼻から入れる方法(経鼻内視鏡)があるが、「どちらを採用しているか」によって医師の検査の質は変わってくるのか。実は、この点については専門家の間でも見解が分かれている。
マールクリニック横須賀院長の水野靖大医師は、「睡眠薬」を使って患者のつらさを軽減した上で「口からカメラを入れる」方法を採用している。
「口からなら解像度の高い大きな胃カメラを入れられるので、画像が見やすくなって見落としの可能性が減る。“時間がかかる”“睡眠薬で事故が起こるかもしれない”などのリスクを挙げる医師もいますが、それはいずれも適切にケアすれば防げるものです。
私が使っている睡眠薬は、点滴で注入してゆっくり眠りに入ることができます。たしかに睡眠薬により呼吸が止まってしまうリスクはあるものの、懸念される事故とは“息が止まってしまう前に投薬の中止など適切な処置をしないこと”ですが、これは生体監視モニターで酸素飽和度と脈拍を見ながらゆっくり薬を入れていけば防ぐことができます」(水野医師)
一方、静岡赤十字病院健診部長・経鼻内視鏡センター長で内視鏡指導医の川田和昭医師は“鼻から”を推している。
「経口内視鏡がつらい最大の要因は、内視鏡が舌根部(舌の付け根)をこすりながら挿入されることです。これが“オエッ”と感じる原因です。その苦しさから“もう二度とやりたくない”と、バリウムを飲むX線検査を選ぶ患者さんも多かった。
しかし、経鼻内視鏡であれば苦痛がほとんどなく、私の病院で経口と経鼻の両方を受けたことがある患者さんの97%が『経鼻のほうが楽だった』と答えている。『次回の内視鏡検査は経口、経鼻のどちらにしますか』という質問にも、97%が『経鼻』と答えた。経鼻内視鏡は胃カメラのハードルを下げたと断言できます」
また、麻酔で眠らせるタイプの内視鏡と違い、検査中に検査医との会話が可能なため、モニターを見ながら説明を受けられるメリットもある。