臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、日本と韓国の入国制限を巡る対立について。
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それにしてもなぜ韓国は、というより文政権は、日本のやることをなんでも悪意や敵意と取るのだろうか?
9日午前0時、日本政府は新型コロナウイルスの感染が拡大する中国と韓国からの入国を制限した。中韓からの入国者には自宅や宿泊施設で2週間の待機を要請、発給済みのビザの効力も停止した。すると、これに韓国が猛反発。日本に対して90日間のビザ免除措置を停止すると発表し対抗措置を取ったのだ。
パンデミック的な感染拡大により、各国では入国や移動を制限し、市や街全体の封鎖に踏み切っている地域すらある。韓国に対して入国制限をしている国はすでに100以上だ。なのに文政権では日本だけに対抗措置を取った。康京和(カン・ギョンファ)外相は外務省に富田駐韓大使を呼び出し、日本の入国制限を非友好的、非科学的、不当な措置と猛烈に抗議。入国制限の撤回を要求した。
康外相といえば、シャープな顔立ちにメタルフレームのメガネ、グレーヘアが特徴。知的だけれど近寄りがたく冷たい印象が強い。日本に対して見せる表情には、いつもバサバサと人を切っていくようなキツさやとげとげしさが表れているが、今回はそれ以上に怖い。困惑した表情の富田大使を前にした康外相の顔は凄みすら感じさせる。どの写真を見ても険があり、身体中から怒りが発散されているようだ。
康外相の姿は、今の文政権の反日姿勢をそのまま体現しているのだろう。昨年は徴用工問題などにより、日韓関係が戦後最悪になったといわれた。日本製品の不買運動から軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄と、これまでにも文政権の反日姿勢は強硬だ。反日を強く支持する彼らの頭の中には、日本に何かにつけて対抗し、こちらが意図していないことでも挑発されたと思い込み、さらにちょっとしたことでも悪意があると感じて敵意と怒りを自動的に抱くような回路が作られてしまっているのではないだろうか。
相手からの行為をなんでも悪意や敵意があるように感じてしまうのは、「敵意帰属バイアス」という心理的傾向である。この傾向が強いと、わずかなことでも敵意的に解釈してしまい、攻撃的、報復的行動を取りやすいといわれる。
その上、韓国が日本に対して持つ“恨(ハン)”の感情とそこからくる抵抗心や対抗心が問題をさらに複雑にしている。生み出される怒りや敵意は、経済や文化など様々なレベルで関係が親密になるほど、自国の要求に応えない日本に対して増幅される。他人に無視されるより、友人に無視される方がこたえるのと同じような心理だ。この“恨”により自国の要求に責任を持つべきは日本だと主張し、常に日本にマウンティングしなければ気がすまず、拒否されればそれに対し過剰に反応する。
新型コロナウイルスの感染拡大は当面続き、警戒を緩めるわけにはいかないというのが9日に行われた専門家会議の見解だ。今回の日本だけに対する報復的な対抗措置は、やはりあまりにも感情的な対応に見えるようで、韓国国内でも批判が高まっているらしい。こんなときこそ互いの国民を守るための協力的な方法や措置を提案した方が、よほど政権の支持率がアップするのでは…?と思うのは、結局、日本人的な見方にすぎないのだろうか。