胃カメラには、口から入れる方法(経口内視鏡)と鼻から入れる方法(経鼻内視鏡)があるが、口からでも鼻からでも、操作する医師の技術が重要となる。
「胃カメラで病気を早期に見つけられるかどうかは、医師の技量の問題」と断じるのは、マールクリニック横須賀院長の水野靖大医師だ。
「その技量とは、経験と知識です。まず“見逃しやすい箇所がどこか”を知っていること。見逃しやすい箇所はデータとしてさまざまな研究で報告されているので、それを知ったうえで見ているかどうか。また、“がんが起こりやすいのはどこか”を知っていることも検査医には必須です」(水野医師)
静岡赤十字病院健診部長・経鼻内視鏡センター長で内視鏡指導医の川田和昭医師も同意見だ。
「一番大事なのは“観察眼”です。いくら性能の良い内視鏡を使っていても、観察眼を鍛えられていない検査医では病変を見つけられません」
注意したいのは、胃内視鏡を使って病変を切除するESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)の存在だ。「『診る技術』と『切る技術』はまったく別種のもの」だと水野医師は言う。
「前提として、胃カメラ検査をしたクリニックで、そのまま病巣を切るということはほぼありません。検査とESDでは難易度がまったく違います。診る技術を求めるのであれば、街のクリニックでも良い医師を探すことができますが、切る技術を求めるなら『ハイボリュームセンター』と呼ばれるがん研究センターや大学病院でやってもらうべきでしょう。ESDは胃カメラの延長としてではなく、外科手術の胃カメラ版と考えてください」(水野医師)
“診る”のが上手な検査医に検査してもらい、“切る”のが上手な医師に手術してもらうのがベストなのである。
※週刊ポスト2020年3月20日号