予定通り開催すべきか、否か──その議論を口にすること自体が東京五輪に関わる人々にとっては悪夢のようだ。
「頭の中では皆、中止や延期を想定しているが、その意見を言えば責任を取らされかねない。これまで注ぎ込んだ20兆円ともいわれるカネがパーになるだけに、提案すること自体がタブーになっている」(組織委関係者)
そんななか、「具体案」が世界的に注目を浴びている。
新型コロナウイルスの感染が収束に向かわなければ、東京五輪は1年後に延期──そんな「TOKYO2021」案に言及したのは、国際オリンピック委員会(IOC)で、最古参の委員であるディック・パウンド氏だった。2月26日にロイター通信などが報じたところでは、同氏は「もし日程の再検討が必要となれば理論上は同じ開催時期で2021年に延期される可能性がある」と話したのだ。
現状の日程を秋にスライドする案に関しては、欧米のプロスポーツのシーズンと重なるため否定的で、代替都市での開催や分散開催は準備期間が短くて現実的ではないと指摘。だから1年延期が説得力を持ってくる。
仮に1年後の開催となった場合、各競技団体やアスリートは重大な問題に直面することになる。スポーツ紙デスクが語る。
「現時点で内定している代表選手を取り消し、選考をやり直す可能性が出てきます。地元開催でひとつでも多くのメダルを獲得しなくてはならない以上、開催時に最も調子が上がっている選手を選ぶというのは、当然あり得る判断。むしろ代表選考をやり直さないほうが問題視されるでしょう」