ウイルスとの戦いは続くが、テクノロジーがもたらす変化は小さくなさそうだ。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が指摘する。
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新型コロナウイルスとの戦いに四苦八苦する中国だが、2月中旬からわずかな曙光が差し始めてきた。武漢市・湖北省を除く地域では明らかに新たな感染者は減少し続けている。そして3月1日には、武漢でも市内に設けられた臨時病院の一つが役割を終えたことも報じられた。だが、中国社会が昨年の12月以前の状況に戻るには、まだまだ遠い道のりだ。
中高の教育現場では、いまだに生徒たちが通学する目処は立っておらず、自宅待機のまま、インターネットを通じた授業が進められている。だが、こうした社会へのストレスは、中国人の生活を大きく変えるのではないかとの予測があり、それは悪いことばかりではないとの指摘も出始めている。
それこそが在宅勤務やテレワークといった新たな働き方の本格的な浸透であり、労働者が戻らないという人手不足の現場を補うための機械化の流れである。さらにこれに「非接触」というキーワードが加わるのだ。
2月22日には、中国で無料のオンライン診察サービスが始まったことが『人民日報』系のメディアで報じられた。「非接触」の診断が可能になるということだが、これは軽い症状で人々が病院に殺到して無用な感染や医療崩壊を引き起こさないための方策。そして後々まで一般化してゆく可能性が指摘されている。
人手不足と「非接触」を可能にするのは、やはりなんといってもロボットで、そうした動きも活発だ。四川省・成都市錦江区のホテルでは「非接触のサービス」を行うことをホテルの特徴に据え、山東省青島市、ロボット「看護師」が活躍し始めたという。
興味深かったのは湖北省鄂州の第三病院である。院内での感染リスクを軽減するために、「土鍋飯製造用ロボット」を導入したというのだ。自動で具材を入れて仕上げてくれる。1時間に100~120人分の土鍋飯を作ることができる優れものだという。
雲南省の昆明医科大学第一附属病院では、初となる「5G+VR」隔離監視システムが導入された。新型コロナウイルス感染による肺炎の疑いがある患者と家族のために、相互コミュニケーションを可能とする5G「ライフライン」の構築だという。こうしたさまざまな機器が投入されることで中国の社会が、大きく様変わりするとの予測は案外間違っていないのかもしれない。