コロナ関連ニュースが溢れる中、ふるさと納税をめぐる不正事件が摘発された。舞台は高知県の奈半利町(なはりちょう)。ふるさと納税を担当する地方創生課の課長(45)と課長補佐(41)、そして返礼品を扱う業者(30)の3人が逮捕された事件である。その背景を追うと、ふるさと納税をめぐる闇と地方自治体の苦境が浮かんでくる──。ジャーナリストの山田稔氏がレポートする。
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事件の舞台となった高知県奈半利町は、高知県東部の室戸市に隣接する人口3000人余り、太平洋と四国山地に挟まれた面積28平方キロメートルの小さな町である。
主産業は漁業、造船業などで特産品は金目鯛と無花果(いちじく)。紀貫之の「土佐日記」には「十日、けふはこの那波の泊にとまりぬ」との記述がある。町の北を通る野根山街道は中岡慎太郎らの脱藩の道として知られる。歴史の街でもある。
とはいえ、つい数年前までは、全国的にはほとんど無名だった。それが「ふるさと納税」で一気に注目を集めた。2017(平成29)年度のふるさと納税額が39億円に達し、全国9位となったからだ。地元紙は「ふるさと納税、高知県奈半利町が39億円で全国9位」(2018年7月)と報じ、小さな町の快挙は全国的な注目を集めたものだ。
それから1年半ちょっと。今度は逆の意味で話題となった。町の財政を支えてきたふるさと納税を巡る不正が摘発されたのだ。
逮捕された役場職員2人と返礼品業者の直接の逮捕容疑は「電磁的公正証書原本不実記録・同供用」。ふるさと納税を担当する地方創生課長が、息子名義の口座を介して返礼品業者から百数十万円を受け取っていたなどの容疑が判明。その際、息子が奈半利町から安芸市に転居したとする虚偽の異動届を提出していた。税務調査で発覚しないよう住民登録を移したのではないかとみられている。
これが事件の入り口の容疑だが、本丸はずばり贈収賄だ。高知県警は、最初の逮捕から10日後の3月13日、3人を受託収賄容疑と贈賄容疑で再逮捕した。ついに汚職事件に発展した。