無観客開催の方針から一転、日本高等学校野球連盟は3月11日に「センバツ中止」の判断を下した。会見では高野連の八田英二・会長や毎日新聞の丸山昌宏・社長らが沈痛な面持ちで「苦渋の決断」「選手の安全と健康が第一」と繰り返した。すでに新型コロナウイルスは日本中に拡大していたにもかかわらず、なぜここまで決断は引き延ばされたのか──。
現場で取材する記者たちにとっても、「中止」は意外な判断だった。
「我々の間では“無観客開催で決まり”と思われていました。中止会見の前日、毎日新聞から“大会の取材記者は全体で12%減らす”“カメラ席は1席間隔を空けること”といった具体的な連絡があったからです。それなのになぜ中止になったのか、訝しむ声は多い」(スポーツカメラマン)
出場校関係者の大半も「無観客開催で間違いない」と見ていた。出場予定だった西日本のある高校の野球部部長がいう。
「10日から11日にかけて、高野連から校長宛に“無観客でもやりますか”と問い合わせがあったんです。他の高校も同様だったようで、ある野球部部長とは“開催で良かった”と話していたのに……」
高野連関係者も「開催」で進んでいたと証言する。
「高野連の内部では開催に向けて様々な調整が行なわれていて、みな忙殺されていました。開催となれば今後も膨大な仕事が発生するし、もし開催中に感染者が出れば批判は免れない。それでも球児たちを思えばやりたかった。しかし、自粛要請をさらに延ばした政府や文科省の方針を考えると……。有形無形の“プレッシャー”に負けたというのが正直なところです」
※週刊ポスト2020年3月27日号