日本国内の感染者数は3月19日時点で914人、死亡者は31人だ(クルーズ船を除く)。安倍首相は「新型コロナ対策で全国の医療機関に5000床を確保した」と説明し、国民には、中国やイタリアのような事態には至らないだろうという安心感が広がっている。
しかし、厚生労働省が3月6日に都道府県の衛生担当部署に通知した「新型コロナウイルスの患者数が大幅に増えたときに備えた医療提供体制等の検討について」と題する文書の内容を見ていくと、決して楽観できないことがはっきりわかる。
文書は西浦博・北海道大学医学研究院教授の研究チームの報告書をもとに、感染のピークとその時の患者数などの計算式が記載され、各都道府県に「必要な医療体制の確保」を要請したものだ。
それによると、感染ピークは感染経路が追跡できないほど拡大した時点から「概ね3か月後」に到来する。全都道府県のピークが重なったと仮定すると、1日あたりの受診者数は全国で約42万人、入院が必要な患者数は約22万人、重症患者は約7400人に達する計算になる。
◆外来がパンクする
“最悪のケース”とはいえ、現在とはケタ違いの数の感染者が発生すると想定されているのだ。まず、42万人の受診者が殺到すれば、全国の病院の外来はパンクする。
ベッドも足りない。全国の病院のベッド数は約164万床、そのうち精神病床、療養病床(介護)、結核病床など専門病床を除外した一般病棟は約89万床だ。そこで22万人の感染者の入院が必要となれば、準備された5000床はすぐに埋まってしまい、ベッドが決定的に不足する。「感染しても入院できない」という“入院難民”が大量に発生することになる。