スポーツ

1964年の聖火リレー 10万人超が本気で繋いだ列島6755km

最終ランナーの坂井義則氏(Jochen Blume/ullstein bild/時事通信フォト)

 2020年東京五輪の聖火リレーもスタート目前だが、1964年東京五輪は、聖火リレーがとりわけその象徴として人々の心に残っている。それは当時米軍占領下にあった沖縄を含めすべての都道府県を回り、五輪史上最多の10万人もの走者(2020年は約1万人)が参加したことと無関係ではない。人々は間近に見る聖火リレーを、五輪本番に匹敵する大イベントとして受け止めた。

 8月23日、日本航空の聖火空輸用特別機でギリシャを発った聖火は、中東・アジアの11中継地をリレーしたのち、9月6日に沖縄入りするはずだった。しかし4日、聖火が滞在中の香港を台風17号が襲う。さらに強風で飛んできた異物が待機中の特別機を直撃し飛行不能になった。

 沖縄での日程短縮の可能性も浮上し、祖国復帰への希望を託して1961年から聖火の訪問を働きかけて実現に漕ぎつけた沖縄に激震が走った。代替機が用意される一方、特別機の整備も不休で行なわれ、聖火は1日遅れの9月7日正午に那覇に到着。県民の間に歓喜が湧き上がった。

 沖縄から鹿児島に届いた聖火は4コースに分かれて全都道府県を駆け抜け、東京を目指した。4コースの総距離は6755キロ。15~20歳の若いランナーたちの手で約1か月かけて聖火は東京に集結した。

 10月10日、皇居前から国立競技場まで最後のリレーが行なわれると、聖火は10万713人目のランナー、坂井義則さん(当時19歳)に託される。

 坂井さんは早大競走部で五輪出場を目指していたものの代表選考会で敗退。しかし1945年8月6日に広島で生まれたことが平和の祭典の象徴になるとして最終ランナーに選ばれた。抜けるような秋空の下、トーチを右手に持ち、7万5000人の大観衆が待つ競技場へ。163段の階段を登りきり、午後3時過ぎ、聖火台に点火。坂井さんの顔には安堵の笑顔が浮かんでいた。

当時の東京都庁に到着した時の様子(時事通信フォト)

※週刊ポスト2020年4月3日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン