プロスポーツでは「試合に勝つ選手が人気者」であることが常だが、他の追随を許さない強さ故に、ファンからの声援は少なく、珍しく敗れたときは相手に大歓声が送られる者が出現する。だが、大相撲の世界では、強すぎてヒール扱いされる力士が必ずいる。
貴乃花、若乃花(三代目)、魁皇らと同じ1988年初土俵の曙。優勝11回、横綱通算432勝はライバル・貴乃花をしのぐ。ハワイ出身の外国人初の横綱で、初土俵から30場所での横綱昇進は貴乃花より11場所も早かった。
「貴乃花との対戦成績は21勝21敗と五分だが、若貴兄弟との巴戦(1993年7月場所)では、長いリーチを生かした突っ張りで2人を秒殺。瞬間最高視聴率66.7%が証明するように兄弟対決は国民の夢だったが、それを曙は2連勝で打ち砕いた」(相撲担当記者)
その巨体で日本人力士を跳ね返したハワイ出身の先輩・小錦は、「相撲はケンカ」と発言し、“黒船来襲”と騒がれた。大関として3場所で2回優勝し、優勝同点も2回経験したが、「連続優勝」の内規が厳格に適用され、横綱昇進を果たせず、人種差別問題にも発展した。
実力も、トラブルメーカーとしても規格外だったのは、モンゴル出身で初の横綱・朝青龍。歴代4位の25回の優勝を誇るが、不祥事により29歳で引退に追い込まれている。史上最長タイの7連覇の記録もあるほどの実力者だった。
「張り差しやけたぐりを繰り出しては批判され、壊し屋としても有名だった。2007年3月場所での稀勢の里との一番では、張り手の応酬の末に、送り投げで土俵中央に転がし、その後にひざ蹴りを見舞って問題になった。稽古場では若い衆に吊り落としやヘッドロックなどのプロレス技をかけることで知られていた」(相撲担当記者)
歴代最多となる通算43回の優勝を誇る白鵬も、横綱審議委員会からの批判がありながら、立ち合いでカチ上げを繰り返すなど、品格を理由に「引退後の一代年寄襲名は難しいかもしれない」(同前)といわれている。ほかにも優勝インタビューでの「万歳三唱」「三本締め」などでも物議を醸す。
※週刊ポスト2020年4月3日号