新型コロナは「持病を持つ高齢者」が最も重症化リスクが高い。そうしたなかで、定期的に通院して薬の処方を受ける必要がある慢性疾患を抱える高齢者は「病院の待合室で感染」というリスクに直面する。
兵庫県の病院では男性患者から医師ら病院スタッフへ新型コロナが感染したと考えられる事例も明らかになっている。こうした「院内感染」が起き、医療スタッフに感染が拡大すると、外来を受診するために通院する人は「死のリスク」と隣り合わせになる。それでも、医師からは「薬は2週間しか処方しない。症状の変化を診るために定期的な通院を」と指示される。
こうした頻繁な「通院」を求められるのは、当たり前のように思われているが、そうではない。元東大医科学研究所特任教授で医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏が指摘する。
「まず、日本は諸外国に比べ、処方箋がないと出してもらえない薬が圧倒的に多い。その上、医師側の権限が強く、どのくらいの期間の薬を処方するかの判断で患者側の利便性は軽視されがちです。もちろん、症状に変化がないかのチェックは大切ですが、病院側が期間を小刻みにして、再診料を稼ごうとしているケースも散見されます」
先進諸国では1回の処方で一定の期間、繰り返し薬を受け取れる「リフィル処方箋」制度が導入されている例もあるが、日本にはない。
新型コロナ問題によって、日本の医療制度の歪みが露わになったかたちだが、「通院」という死のリスクを少しでも避けるには、パソコンやスマホのビデオ通話機能を使った「遠隔医療」の活用といった対策を患者自身が模索する必要がある。