五輪史上最多の10万人もの走者(2020年は約1万人)が参加した1964年の東京五輪聖火リレーには、様々な人が走者として加わった。高校3年生だった野球解説者の山崎裕之氏が、聖火リレーの思い出を語る。
【走った区間:10月6日 埼玉県上尾市 仲町~愛宕町区間】
10月に聖火リレーを走って、11月の末に東京オリオンズとの契約が決まり、翌年1月にはもうキャンプイン。今思うと、なかなか激動の高校3年でした。一度リハーサルがありましたが、自分でも鏡の前で「この腕の角度ならトーチが格好良く見えるなー」なんてポーズをとってみたりね(笑い)。
ショー化した現代と違って、当時のオリンピックは厳かなスポーツの祭典。大役を果たすとあって、とにかく緊張しました。走った中山道沿いでうちは商売をしていて、家族が日の丸を振ってくれたんですが、その声援も聞こえないくらい必死で。終わった時にはホッとしました。
オリンピックの年が来るたびに「すごい経験をさせてもらった」と感じ、トーチは家宝です。
●やまざき・ひろゆき/1946年生まれ、埼玉県出身。野球解説者。東京オリオンズ、ロッテオリオンズ、西武ライオンズに在籍。2000本安打達成。
※週刊ポスト2020年4月3日号