〈安倍総理はこれまでいいこともたくさんやってきた。/しかし、新型肺炎の対応で、それらの功績はすべて吹き飛んだ〉
これは、これまで安倍晋三首相の“応援団”の代表格とみなされていた保守派論客・百田尚樹氏による2月21日のツイートだ。なぜ百田氏は、厳しい批判を繰り広げたのか。雑誌『ニューズウィーク日本版』で特集「百田尚樹現象」(2019年6月4日号)を執筆したノンフィクションライターの石戸諭氏が、聞いた。
──率直なところを伺います。当初、安倍首相の方針に異を唱えましたが、では百田さんにとって安倍首相の他にこの人なら大丈夫だと思える政治家はいますか?
百田:安倍さんは今のところ、私が見る限りベストに近い総理です。これ以上の政治家は今の日本では見あたらないでしょう。野党政治家なんて論外です。その安倍総理でもこのくらいの対応しかできないのか、という失望がありました。安倍さんにはきついことは言いたくないけど、でも、これはあかんやろと考えて、ネット番組でも批判しました。
感染が拡大する前は、日本中が「まぁこのくらいなら大丈夫だろう」という感覚だったでしょう。国全体が「大丈夫」だという認識のもと、情報を集めていた。正常性バイアス(自分に都合のいい情報を集め、それ以外の情報を過小評価すること)があったというのが私の見方です。1月の時点ではメディアも識者も大衆も楽観していました。もちろん政府もです。国民の見識以上の総理は現われませんから。
平時の政治家はだれでもできるっていうのは私の持論です。有事の対応にこそ、政治家の本当の器が出ると思っています。私がツイッターで中国人観光客を受け入れるなと言ったら、「サヨク」だけでなく、「安倍政権支持者」からも強烈な批判を受けました。政権の足を引っ張るな、というわけです。
でも私は自分が言いたいことを言っただけ。政権に影響を与えたいという気持ちはまったくないです。
※週刊ポスト2020年4月3日号