世界中で感染を広げる新型コロナウイルス。なじみ深い地域で感染者が出たことを知らせるニュースが流れるなど、いよいよ身近になったことを感じている人も多いはずだ。
そんな中“震源地”である中国武漢市の研究で「新型コロナウイルスにかかりやすい血液型がある」ことを示唆する驚きの研究結果が公開された。正式発表ではない段階ではあるものの、「血液型と新型コロナウイルス感受性の関係性」と題し、中国の武漢大学や南方科技大学などの8つの医療機関の研究者らが著したこの論文は、医療関係者らの注目を集めている。
論文の内容は、武漢市と深セン市の新型コロナウイルス感染者2173人の血液型パターンを分析したところ、感染者、死亡者ともに「A型の血液型を持つ人の割合が高かった」というものだ。
そのメカニズムを詳しくひもとく前に、データの前提となる現地の血液型分布を考慮してみたい。論文では武漢市に住む健康な市民の血液型はA型32.16%、B型24.90%、AB型9.10%、O型33.84%としている。A型が多い日本人とは違い、O型が最多という構成になっている。
ウイルス感染者の中で最も多かった血液型は前述の通りA型で、37.75%を占める。続いてB型26.42%、O型25.80%、AB型は10.03%という順だ。さらに、感染後に死亡に至った人の血液型を分類するとA型41.26%、B型24.27%、O型25.24%、AB型9.22%という結果。なんと死亡者の4割以上がA型という衝撃のデータが明らかになったことになる。
どうして血液型によってこんなに差がついてしまうのか。米ハーバード大学院卒の医学博士、左門新さんはこう分析する。
「コロナウイルスにかかるメカニズムにヒントがあると思います。人間の肺にある『ACE2』というたんぱく質でできた受容体がウイルスを取り込んでしまうことで感染が起きるのですが、そのとき、受容体にウイルスがくっつくのを邪魔する物質が存在する。それが『抗A型抗体』。A型の人はこの抗体を持っていないのです」
2003年から大流行したSARSもコロナウイルスの一種であり、やはりA型の人がウイルスを取り込みやすく、感染者が多いことが判明していると左門さんは補足する。
「日本はA型の人が最も多いので、中国より感染者や致死率が高くなる可能性も考えられる。充分な注意が必要です」(左門さん)
抗体とは簡単に言えば、体内でウイルスを攻撃する物質のこと。4つの血液型で抗体の特徴が異なり、それが血液型によってウイルスの感染率が変わる理由でもある。
順を追って説明していこう。血液の液体部分は「血漿(けっしょう)」と呼ばれるが、ここに抗体が含まれる。
東京医科歯科大学名誉教授で『病気の9割は免疫力で防げる』(エイ出版社)の監修を務める藤田紘一郎さんが解説する。
「A型の人の血漿には『抗B抗体』が含まれており、B型の人は『抗A抗体』を持っています。O型の人は『抗B抗体』も『抗A抗体』も両方持っていますが、AB型の人はどちらの抗体も持っていません。
O型の人は、血漿中で『抗A抗体』と『抗B抗体』という2つの抗体を絶えず作り続けている。つまり、免疫力を常に活性化させているわけで病気に強い。序列でいうとO→B→A→ABの順番に病気に強いといえます」