1960年代、子供に人気だった「巨人、大鵬、卵焼き」の“対義語”として1970年代後半に登場したフレーズが「江川、ピーマン、北の湖」。プロスポーツ選手なら強いほど人気者になるのかというとそうではなくて、憎たらしいほど強いと言われた大相撲横綱・北の湖と並び、読売巨人軍の江川卓投手はプロ野球界のヒール(悪役)だった。
作新学院、法政大で活躍し、「怪物」の異名を取った江川卓だが、1978年にドラフト制度の「空白の一日」という盲点を突いて巨人に入団。1年目は一軍昇格を2か月自粛しながらも9勝、2年目は16勝を挙げて最多勝を獲得し、3年目には投手5冠に輝くなどプロでも飛び抜けた実力を発揮したが、入団の経緯から世間の猛反発を買い、「嫌われ者」の代名詞となった。
そして、同じく巨人の斎藤雅樹はプロ7年目の1989年から2年連続で20勝を挙げ、11連続完投勝利の日本記録をマークするなど安定感抜群。“ミスター完投”と呼ばれた。
「ただ、どうにも地味で、しかも先発の試合は結果が見えているからか、視聴率が上がらない。テレビ局関係者には“ミスター裏番組”と皮肉られていた」(スポーツ紙デスク)
1998年ドラ1の上原浩治は1年目から開幕15連勝を記録し、20勝4敗で投手4冠、沢村賞に輝いた。
「上原の場合、投球のテンポがよくて20時台に試合が終わってしまう。残りの中継時間は名場面VTRなどで埋めるので、視聴者がチャンネルを変える。その意味でやはり“ミスター裏番組”と呼ばれた」(同前)
※週刊ポスト2020年4月3日号