新型コロナウイルスとの戦いに終わりは見えない。スーパーでの一部商品の品薄状態ももはや定着してしまった感さえある。これでいいのか。空っぽの棚を見て、おそらく誰もが一度は感じたことではないか。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が指摘する。
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3月25日(水)の夜、都内で新たに40人の感染者が確認されたことで、小池百合子都知事による緊急会見が行われた。そこでは「ロックアウト」「オーバーシュート」「感染爆発」「重大局面」などの強い単語を織り交ぜながら、「週末は不要不急の外出自粛を」と外出自粛要請がなされた。人は不安になると買い物に走る。昨年の台風禍もそうだったし、東日本大震災のときもそうだった。
イオンやイトーヨーカ堂などが加盟する日本チェーンストア協会が発表した2月のチェーンストア販売概況(会員企業55社、1万0548店舗)によると、総販売額は9376億円と昨年同月比でプラス4.1%。とりわけ食料品は5.8%増の6506億円と伸びている。対して日本フードサービス協会が発表した2月の外食売上高は、ファストフードのテイクアウトや、持ち帰りの米飯や回転寿司が伸びたこともあって全体としては4.8%増だったが、パブ・ビアホールは対前年比で90.4%、居酒屋も95.2%。在宅勤務やリモートワークが始まったばかりの2月でこうだから、3月の数字にはさらに開きが出るはずだ。
大企業がリモートワークや在宅勤務に移行したことで、外食の回数が減り、職場近くの飲食店で食べていた食事が、家の食卓に振り替えられつつあった。移動の回数が減り、距離が短くなった結果、居住地近くのスーパーでまとめ買いをする機会も増えていた。テレビの画面などではスーパーのがらんどうの棚ばかりが強調されるが、震災や台風など度重なる災害を経験したせいか、今回は一定の落ち着きも感じられた。
都知事の会見があった25日の深夜に都心の24時間スーパーを覗くと、いつもより多少人は多かったものの、真っ先になくなるはずの乾麺のパスタやインスタントラーメンはまだ残っていたし、コメも潤沢にあった。
翌26日の日中、あるスーパーが入場制限をしているのを見てギョッとしたが、行列は整然としていたし、その入場制限も「お客様同士の距離を保って、お買い物ができるよう」との意図で店内はほどほどのにぎわい。コメやパスタは昼頃に売り切れたが、そばやうどんの乾麺や、冷凍食品はまだ残っていた。買い物帰りの客が提げているレジ袋もひとつかふたつ。持てるだけ買うという人の姿もほとんど見なかった。