新型コロナウイルス対策のための休校措置により、いつもより長い春休みとなっている学生たち。アルバイトに励もうと思っても、日本中がなるべく外出をしなくなっているため仕事もない。そんなとき、SNSだけでお金がもらえるならと現金プレゼントをうたうアカウントをフォローし、DMやLINEなどのやりとりへと発展させてしまってはいないか。詐欺の手口だとずいぶん言われているのになぜ、信用したのかと問うと「プロフィールに顔写真があったから」と答える人が最近では少なくない。なぜ詐欺アカウントが顔写真を公開しているのか、ライターの森鷹久氏がレポートする。
* * *
「Gです。信用してもらえるよう、顔出しアカウントを開設しました!広告費として10万円ずつ配ります」
SNS上で「現金やギフトカードをプレゼントする」などといって、ユーザーにフォローや投稿の拡散を求めるアカウントの主、G氏が「顔出し」をしたのは二月の上旬頃だった。言うまでもなく、SNS上に溢れるこうした”プレゼントアカウント”は、そのほとんどが個人情報の入手などのために作られた「フェイクアカウント」である。NHK『クローズアップ現代+』で取り上げられるなど、マスコミも実態を調査した上で報じている。
ところが、アパレル通販サイトZOZOの元社長・前澤友作氏など一部の著名人が実際にSNSを用いた本当の「プレゼント企画」を実施し、本物の当選者もいる。こういった事例があるために、主に中高生など、若いユーザーの中には誰か分からないけれどプレゼント企画を唱えるSNSアカウントをフォローしたり、書き込みを拡散すれば「金がもらえる」と信じている人も少なく無い。
冒頭で紹介したG氏のアカウントをフォローし、後にG氏と「LINE」でやりとりをしていたのが、千葉県在住の専門学校生・森下あかりさん(仮名・19才)だ。
「お金がもらえるなら……と、懸賞に応募するようなノリでアカウントをフォローしました。騙されているか、個人情報が抜き取られるのかなんて、少しも考えませんでした。Gさんからダイレクトメッセージが届いたのは、2~3日経ってからだと思います」(森下さん)
G氏は森下さんにメッセージで「自分のLINEアカウントを友達に追加してほしい」と依頼、森下さんもこれにすぐ応じた。
「面識もない人でしたが、顔写真も公開しているし、お金もあってそれなりの地位にいる人かなと。LINEでは、プレゼントの10万円の話は一切なく、月に10万円を簡単に稼げる話がある、副業をしていればアルバイトをする必要がないなど、全く無関係の話が一方的に送られてくるだけ。プレゼントの話をすると”たった一回のプレゼントより継続的に10万円欲しくないか”と返され、それからやりとりは途絶えています」(森下さん)