3月26日午前10時、福島県楢葉町のJヴィレッジ。本来であれば聖火リレー第一走者のなでしこジャパンの面々がここから出発するはずの時間に、会場の解体が淡々と進んでいた。
結果的にランタンを使って聖火を車で運ぶ方針となったが、五輪の開催自体が迷走し続けただけに、急転直下の大会延期によって“ゴールなき継走”を直前で回避できたことに関係者は胸をなで下ろしたことだろう。
2020東京オリンピック・パラリンピックは「1年程度の延期」へと舵が切られたが、他の国際大会との日程調整や会場・人員の確保、経費負担など問題山積。新型コロナの1年後の終息も見通せないなか、本当に聖火リレーは“再出発”できるのか。少なくとも、56年前、広島・原爆慰霊碑前を走った聖火リレーのような国民的熱狂を再現できないのは間違いない。
◆撮影/太田真三
※週刊ポスト2020年4月10日号