中国での新型コロナウイルスの感染拡大が報じられると、世界中が日本にこのような視線を向けていた。「日本は中国の隣国。経済的交流が深い。両国間の人の往来も盛ん。あっという間に感染爆発するだろう」と──。
しかし、欧米諸国がウイルスの脅威に直面したいま、世界各国はその予想が間違っていたことを認めざるを得なくなった。日本国内では、新型コロナ対策に関して批判や不満の声が上がっているものの、世界的には「感染抑制に成功している国」と評されている。日本における死者数は、世界各国に比べると圧倒的に少ないのだ。
3月31日17時現在、日本の死者数は56人。人口10万人あたりの死者数は0.04人。一方、他国に目を向けてみると、イタリアは死者数1万779人で人口10万人あたりの死者数は17.79人、スペインは死者数7354人で同15.64人。比較にならないほど開きがある。
日本で起きているこの“事態”を、海外メディアは驚きをもって報じている。
ドイツの公共メディア『ドイチェ・ヴェレ』は、3月25日に「中国に近いにもかかわらず、日本では大規模な感染が発生していない。日本人は感染拡大を遅らせるために何をしているのだろうか?」という主旨の特集を展開した。その中で、「握手や頬にキスをする代わりにお辞儀をする日本の挨拶、幼少期から教えられている基本的な衛生教育などが、感染を遅らせる役割を果たしている」と分析。手洗い、うがい、マスクの着用は日本人にとって日常生活の一部であり、新型コロナが発生する前から当たり前の習慣として根付いていることに、大きな注目を寄せている。
「手洗い、うがいなんて、どこの国でも日常的にやっていることなんじゃないの?」
と思う人もいるだろう。東京外国語大学教授の篠田英朗さんが解説する。
「欧米では、手を洗える場所そのものが少ない。日本なら公衆トイレがあちこちにあるし、公園にも水道の蛇口がある。日本のように少し探せば手を洗える場所が簡単に見つかるような国は、欧米にはそうそうありません。“手を洗うためには、家に帰るしかない”のです。
また、日本人は水がない場所では、ウエットティッシュで手を清潔に保つ人も多い。こうした衛生用品を持ち歩くのも、日本人以外ではあまり聞いたことはありません。マスクをするという習慣も、欧米人にはないことです」
日本人の当たり前が、感染抑止につながっていると考えられる事例はほかにもある。
自宅で靴を脱ぐ文化は、欧米に比べて室内にウイルスを持ち込むリスクが低く、公共の乗り物の中で私語を慎む行為は、飛沫感染を防ぐことにもつながっている。
※女性セブン2020年4月16日号