新型コロナウイルス禍が与える経済へのダメージや国民の生活・消費行動の低下は計り知れないが、今後もっとも懸念されるのが、首都圏でバブル状態になっていたマンション市場への影響だ。一体、どうなってしまうのか。不動産コンサルタントの長嶋修氏がレポートする。
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「全国の地価は5年連続上昇、地方でも28年ぶりに上昇に転じ、地価上昇が大都市から地方へと波及」
「住宅地、商業地、工業地などを合わせたすべての地点が5年連続で上昇」
ほんの2週間前。地価回復を思わせるこのような文字が躍った2020年の公示地価の公表。住宅ローンの金利が低く住宅需要が堅調なことに加え、国内外からの観光客でホテルや店舗向けの土地の需要が高まっていること、それに働き方改革による職場環境の改善策として、より広いスペースを確保しようとする会社が増えてオフィス需要が高まっていること──などが背景にあると分析された。
だが、今回ほど公示地価が無意味なものはない。というのも公示地価はあくまで「1月1日時点」だからだ。当時の株価は2万3000~4000円。新型コロナウイルスによる「株価下落」や「企業業績の落ち込み」、「在宅勤務進展によるオフィス需要減」、「インバウンド需要の激減」などはまったく織り込まれていないのだ。
昨年10月の消費増税以降、そもそも生産や消費の経済指標が悪化していたところに、新型コロナウイルスの影響が広がり、現在では経済活動の停滞が鮮明となっている。
街角の景況感を示す2月の景気ウオッチャー調査は、景気の現状判断指数(DI)が急低下し、東日本大震災直後の2011年4月以来の低水準となった。訪日外国人客の急減や日本人の外出自粛の影響が大きい飲食や小売り、サービス業の落ち込みが目立つ。
地価全国ナンバーワンを誇る東京・銀座4丁目交差点付近は観光客の激減や、不要不急の外出を控える動きで閑古鳥。リゾート地として人気が高いニセコ(北海道倶知安町)や、大阪や京都、沖縄など主要な観光地も、この騒ぎで閑散としている。